特措法の施行で何が変わったのか !?
特措法は99年7月16日に公布され、2000年1月15日から施行となりました。
この法律が目的としたことは、第一には、主にダイオキシン類の多量の発生源であるゴミ焼却炉等からのダイオキシン類の排出を削減すること*2、第二には、人の健康への影響を防止するため、ダイオキシン類に関する耐容一日摂取量(TDI)を定め、食品や飲料水、呼吸や皮膚経由でのダイオキシン類の摂取を TDI 以下にすることでした(特措法施行令では「人の体重1kg 当たり4pg-TEQ」)。
その結果、まず特措法で規制対象とされた特定施設(大気及び水質)からのダイオキシン類の排出量目録(排出インベントリー)は99%近い削減率となっています。
これを見ると確かに国内の大気中のダイオキシン類の汚染濃度は環境基準の0.6pg-TEQ/ ㎡を下回り、全国の測定点で環境基準を超過する地点はなくなりましたが、水質については環境基準の1pg-TEQ/L を600倍以上も超過する汚染地点が存在するなど、公共用水域のダイオキシン類汚染は撲滅には至っていません。
第二の人のダイオキシン類曝露量の推計が環境省及び厚生労働省により行われ、その結果は、15年度における人が1日に摂取するダイオキシン類の量は体重1kg 当たり約0.65pg-TEQ と推計され、この数値はTDI の4pg を大幅に下回っているので、健康上の不安はないとの発表を行っています。
しかし、この特措法等に基づくダイオキシン類規制の内容及び測定結果は、以下に掲げるような問題を内包しています。
第一に、ダイオキシン類規制対象としている特定施設は、海外でもダイオキシン類の多量発生源であることが判明している、例えば黒鉛やチタン等の電極による食塩の電解施設を対象としていないことです。
第二に、大気、水質、土壌とも測定地点数と測定頻度があまりにも少ないことです。
また、例えばゴミ焼却炉については定常燃焼状態になった時間帯を測定時としており、バグフィルター等のダイオキシン類等汚染物質の除害設備の故障や機器類からの漏洩(リーク)、非常災害など、高濃度排出が想定される場合の測定は免除されていることです。
第三に、大気、水質、土壌の環境基準が緩いことです。
TDI についても同様です。WHO は1pg-TEQ/kg 体重 / 日を推奨していますし、EU の欧州食品安全機関(EFSA)は、昨年11月20日にダイオキシン類の耐容週間摂取量(TWI)を現行の14pg-TEQ/kg 体重 / 週から2pg-TEQ/kg体重 / 週へ7分の1に引き下げました。
この数値は日本の TDI に換算すると約0.29pg-TEQ/kg 体重 / 日に相当し、15年度の日本人の平均摂取量(推計で体重1kg当たり約0.65pg-TEQ)はこの基準値の2倍以上です。
第四に、特措法に食品基準の設定がないことです。紙数の関係で詳しくは論じられませんが、一部の魚介類(例えば養殖のブリ)のダイオキシン類濃度は高く、体重50kg の人が1日に100g 食べるとして計算すると、平均値でも TDI の4pg-TEQ を優に超えます。
今後の課題は何か
前述の問題点を踏まえた特措法の抜本的な見直し、特措法の目的である健康被害を防ぐ措置として環境基準及び TDI の大幅な強化が求められます。
まず、ダイオキシン類による健康被害の発症例であるカネミ油症被害を教訓として、とくに魚介類を多く摂食する漁民等や、ゴミ焼却炉や食塩電解施設の周辺住民など、中でも発達過程にある胎児や乳幼児などのハイリスク集団への影響調査を行う必要があります。
これらの発生源で働く労働者や周辺住民がすでにダイオキシン被害を発症しているケースがある可能性は否定できません。
アスベスト労災や住民の健康被害の発生を教訓としなければならないと思います。
runより:色々ヤバイと書いてますがダイオキシン類は野焼き、草焼きでも出るんだよなぁ( ̄_ ̄ i)