・ニュースレター第116号
・プラスチック汚染の危機にどう対処するか
代表理事 中下裕子
は じ めに
海洋プラスチックごみによる地球規模の汚染が世界的な課題となっています。
陸上から海洋に流出されるプラスチックごみの量は世界全体で年間800万トンにも及んでいると推計されています。
エレン・マッカーサー財団の報告書(2016年)によると、容器包装プラスチックの使用は、1964年の1500万トンから、2014年の3億1100万トンへと過去50年の間に急増しており、今後20年で現在の生産量の2倍になると予測されています。
そして、このまま増加が続くと、2050年には海洋中のプラスチックの量が魚の重量を上回ると試算されているのです。
さらに、21世紀に入って、海洋プラスチックごみの環境中の挙動に関して、ふたつの重要な事実がわかってきました。
ひとつは、海洋プラスチックごみが、環境中で紫外線、熱、波の力などによって壊れて微細な「マイクロプラスチック」となり、北極から南極、海洋表層から深海底まで、地球の海全体に広がっていることです。
このようなマイクロプラスチックはプランクトンと一緒に餌として海洋動物に摂取され、食物連鎖を通じて地球生態系全体を汚染しているのです。
ふたつ目は、これらのマイクロプラスチックには、PCB 等の有害化学物質を吸着する性質があることです。
したがって、海洋生物はマイクロプラスチックとともにPCB 等の有害化学物質を摂取することになりますので、食物連鎖を通じて人間を含む地球生態系に悪影響を及ぼすことが懸念されています。
こうしたことから、今や海洋プラスチックごみ問題は浮遊・漂着ごみ問題にとどまらず、「プラスチック問題」として抜本的な対策が求められています。
そこで、この問題に対する国際的・国内的取組みを紹介するとともに、私たちは素材としてのプラスチックにどう向き合うべきか、プラスチック汚染の危機にどう対処すべきかを考察したいと思います。