・グリホサート/グリホサート製剤による腸内細菌叢の異常
前述したようにグリホサートが阻害するシキミ酸経路は,植物だけでなく細菌類にもあるため,土壌細菌や人間の腸内細菌にも影響を及ぼすことがわかっている。
グリホサートの作用は植物では非選択性だが,細菌類では種類によって影響が異なることが報告されている。
腸内細菌の培養モデル系に,「ラウンドアップ」を添加して培養し細菌の生残を調べた研究28では,ボツリヌス菌やサルモネラ菌などの悪玉菌は耐性で生残するが,乳酸菌類など善玉菌の多くで減少が報告されている。
またラットの実験で,妊娠6 日目から出生後13週までグリホサート/「ラウンドアップ」を投与して仔ラットの糞便を調べたところ,腸内細菌叢のバランスに異常が起こっていた29。
投与量は,ヒトで安全とされる一日摂取許容量であり,論文の著者らはヒトでもグリホサート曝露により,健康に重要な腸内細菌叢に異常を起こす可能性を警告している。
腸内細菌叢は免疫や代謝を介してヒトと相互作用をとりながら,人体の健康に重要であることがわかってきている。
腸内細菌叢の構成の変動や特定の菌の異常増殖/減少はディスバイオシス(dysbiosis)と呼ばれ,ヒトの腸管のみならず,全身の免疫,代謝に異常を起こし,自己免疫疾患,関節リウマチ,自閉症,多発性硬化症など様々な疾患に関与している可能性が示唆されている。
グリホサート/グリホサート製剤による腸内細菌叢への悪影響が,自閉症発症と関わっている可能性について,複数の論文が出されている。
自閉症発症と腸内細菌叢との関連は注目されている分野で,とくに後退性(regressive)自閉症*12いう特定の型で消化器症状を伴うことが多く,腸内細菌の改善で自閉症状が緩和するという報告がある30。
動物実験でも,腸内細菌の異常と行動異常の関連が確認され,腸内細菌の改善で,行動異常が改善するという報告が複数でている31。