8:「ラウンドアップ」のヒトへの発がん性と多様な毒性〈上〉 | 化学物質過敏症 runのブログ

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グリホサート以外の除草剤シマジン,アミトロールや,有機リン系殺虫剤ダイアジノンなどを用いた研究24でも,農薬製剤が原体よりも高い毒性を示したことから,これらの論文の著者らは農薬原体を基にした安全基準値の決め方に疑問を呈している。
上述したように,農薬の安全基準は,農薬原体の無毒性量を基本にしてその100 分の1 を一日摂取許容量としている(図3AB)。

実際に使われている農薬製剤の毒性が100 倍高いなら,安全係数はキャンセルされてしまい,実際の農薬摂取量が一日摂取許容量と重なるか上回る可能性もあり,安全性が確保されないことになる。

農薬の残留基準は,農林水産省の資料25では“その農薬の様々な食品を通じた長期的な摂取量の総計が一日摂取許容量の8 割を超えないこと及び個別の食品からの短期的な摂取量が急性参照用量を超えないことを確認” して決められているので,農薬製剤の無毒性量が100 倍高い場合,残留基準の決め方に問題が出てくる。
私たちは実際,「ラウンドアップ」などの農薬製剤に曝露するのだから,無毒性量は本来農薬製剤で調べられるべきではないだろうか。農薬製剤は種類が多すぎて調べるのが不可能というなら,安全係数100 をせめて10000 以上にすべきであろう。

グリホサートの発がん性について,農薬原体の結果を重視し,農薬製剤の結果を検討に入れないとしたEFSA や日本の評価法は現実に即しておらず,適切なものとは考えられない。
さらに,日本の農薬の毒性試験には,発達障害の原因となる発達神経毒性,内分泌攪乱作用,エピジェネティックな影響,複数の農薬による複合影響が入っていない1, 26, 27。

その上,グリホサート/グリホサート製剤の比較研究から,農薬製剤が原体に比べ桁違いに高毒性になる場合があることが明らかとなった。

農薬は多種類の毒性試験が実施され,無毒性量の100 分の1 を一日摂取許容量としているのだから安全だという主張は,実態に反しており,早急に訂正すべきであろう。

実際に,厚労省が公開している「食品中の残留農薬等の一日摂取量調査結果」*11 では,一日摂取許容量の1% 以上の残留農薬を検出した例が,2009年から2017 年まで,複数報告されている。

なお,このような経緯の影響か,グリホサートの農薬抄録(モンサント社,シンジェンタ社など6 社の抄録が2018 年に公開)をみると,農薬製剤についてもいくつか試験結果が記載されている。

しかし,急性経口毒性,急性経皮毒性,急性吸入毒性,皮膚や眼への刺激性など急性毒性のみに限られ,肝心の発がん性に関わる慢性影響については実施していない。

唯一,TAC 普及会の農薬抄録では,細菌を用いた変異原性試験を行っているが,不十分であることに違いはない。
*10―最近の農薬では,徐放効果をねらってマイクロカプセルを使ったものも多く,これは大気中に長期に残留し,プラスチック素材をカプセルとして使用している場合,大気中にマイクロプラスチックを放出することにもなり問題が多い。
*11―厚労省では,日本人がどれだけ残留農薬を摂取しているか,多数の食材を混合して検査して,その結果を公開している。
農薬はその種類が多いことから,すべての農薬について調べるわけではなく,選択して検査している。

2009 年から見る限り,すべての結果は一日摂取許容量以下で安全としているが,一日摂取許容量の8.6% 検出された例もある。これらの農薬すべての製剤が,原体よりも100 倍毒性が高いかは不明だが,原体の基準だけから安全といえないことは明らかであろう。
*12―後退性自閉症(regressive autism):子どもの発達において,2, 3 歳まではごく正常に発達するが,その後急に自閉症症状が出てくる場合を示すが,はっきり区別のできる診断名ではない。

自閉症はスペクトラム障害といわれるだけに,多様な自閉症状を伴い,診断名が自閉症からADHD など途中で変わるとことも多く,成長して治ることもあるが,「引きこもり」など2 次障害,3 次障害で悪くなることもある。成人になってから発達障害と診断される場合もある。