7:「ラウンドアップ」のヒトへの発がん性と多様な毒性〈上〉 | 化学物質過敏症 runのブログ

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*8―グリホサートの農薬評価書は2016 年,農薬抄録は2018年に公開されている。グリホサートの農薬登録は1980 年であるのに,これらの評価書,抄録がつい最近まで公開されていなかったことは問題だ。実際に使用される農薬の情報は,速やかに公開されるべきである。また農薬評価書や抄録には,企業秘密として未公開と記載されている情報が多く見られる。ヒトへの安全性に関わることだけに,すべてを公開するのが当然であろう。
*9―グリホサートの一日摂取許容量は,日本では1 mg/kg/day,EU では0.5 mg/kg/day,米国では1.75 mg/kg/day と異なっている。急性参照用量については,日本や米国では必要なしと評価され設定されていないが,EU では0.5 mg/kg/day とされている。グリホサートの急性毒性は比較的低いが,「ラウンドアップ」など製剤の急性毒性は高いことが知られている。

原体より毒性が高い農薬製剤 ―― 不適切な農薬の安全基準
農薬の安全基準値については,農薬原体について規定されている多種類の毒性試験の結果から,一日摂取許容量や急性参照用量が,図3AB のような方法で決められている。

急性毒性,慢性毒性など多種類の試験のうち,影響が出なくなる無毒性量のなかで最も低い値を,安全係数100(種差10×個体差10)で割ったものが,一日摂取許容量となる。

一日摂取許容量*9は,毎日一生涯にわたって摂取し続けても,健康への悪影響がないと推定される一日あたりの摂取量とされている。


図3―農薬の安全基準の決め方
A:農薬原体の無毒性量から算出する一日摂取許容量ADI の決め方。B:農薬の毒性と基準値の関
係(食品安全委員会の資料をもとに農薬製剤の毒性など追加改変)。実際の残留農薬の一日摂取量は
幅がある。農薬製剤の毒性が原体の100 倍高い場合,実際の一日摂取量は,農薬製剤から換算し
た一日摂取許容量を超える可能性がある。急性参照用量(ARfD:Acute Reference Dose:短期間に
単回経口摂取した場合の安全基準)。

短期間に単回経口摂取した場合の安全基準として急性参照用量が決められるが,急性影響が想定されない場合には,理由を明らかにした上で設定されないこともある。

農薬製剤の毒性については,通常検討されない。また,医薬品ではヒトへの影響を確かめる臨床試験が必須だが,農薬ではヒトへの影響は確かめられないので,実際に使用した後から,ヒトへの毒性が判明した例が多数ある。
グリホサートとその農薬製剤(「ラウンドアップ」など)の毒性についての研究では,農薬原体,農薬製剤,もしくは両方を用いて調べている。

原体と製剤の毒性を比較した研究では,「ラウンドアップ」など農薬製剤で毒性が高く,グリホサート原体の毒性は弱い傾向がみられた。

2014 年の論文では,ヒト胎盤由来の細胞への毒性を調べた結果,「ラウンドアップ」はグリホサートよりも約100倍毒性が高かった20(図4)。

この報告ではグリホサートに限らず,ネオニコチノイド系農薬でも,原体より農薬製剤の毒性が100 倍近く高く,他の農薬でも市販の製剤の方が毒性が高い傾向を示した。

農薬製剤は,農薬の効果を高め,持続させるために添加剤が加えられているので,当然の結果であろう。
特にグリホサートとその農薬製剤「ラウンドアップ」などでは,農薬製剤の毒性が約100 倍も高いことが複数の研究で報告されており,細胞レベルでも動物実験でも,製剤の高い毒性が明らかとなっている。これはグリホサートに毒性がないというのではなく,添加剤によってグリホサートが極めて高い毒性になることを示している。
一般に農薬製剤には多種類の添加剤*10が含まれているが,その内容は企業秘密で公開されていない。

添加剤には界面活性剤,溶剤,安定剤,防腐剤,染料,乳剤など多種類あり21,それ自体に毒性があるものも多い。「ラウンドアップ」の毒性で注目された添加剤は,POEA(ポリオキシエチレン牛脂アミン)という非イオン系界面活性剤である。
もともと界面活性剤は細胞膜を壊す性質があり,POEA や界面活性剤には強い細胞毒性が報告されている22, 23。

旧モンサント社のホームページには,「ラウンドアップ」にはPOEA 以外にも多種類の添加物が入っていると記載されている。このように添加剤自体に毒性をもつ物質があり,さらに添加剤が農薬原体の毒性を著しく強める場合もあることから,農薬の添加剤はすべての情報を公開するべきであろう。