4:「ラウンドアップ」のヒトへの発がん性と多様な毒性〈上〉 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・「ラウンドアップ」/グリホサート製剤の急性毒性
グリホサートやグリホサートを有効成分とした農薬製剤(以下,グリホサート製剤)はヒトには安全と宣伝されてきたが,急性毒性の症例も報告されている。

日本の例では,「ラウンドアップ」を約2リットル,防護具なしで撒いた70 歳男性が,足の痛み,紫斑などの急性症状で緊急入院した報告がある5。

この例では,血管炎性ニューロパチーと診断され,入院時や入院中は歩けなかったが,退院時には杖で歩行できるまで回復した。

これ以外にもグリホサート製剤曝露により,リウマチ性関節炎や肺炎を発症した急性障害が報告されている。自殺目的でグリホサート製剤を服毒した例では,急激な低血圧6,呼吸困難や代謝性アシドーシス7,突発性食道破裂を起こして死亡した症例8もある。
国内でもグリホサート製剤による中毒例は多く,急性毒性には「ラウンドアップ」/グリホサート製剤に含まれる界面活性剤などの添加剤が関与している可能性が指摘されている9。

このように急性毒性の例もあるので曝露には注意が必要だが,我々が日常生活で最も気がかりなことは発がんなどの慢性毒性だろう。


グリホサートならびにグリホサート製剤の発がん性に関わる論争
国際がん研究機関IARC は2015 年3 月,除草剤グリホサートおよびグリホサート製剤について精査した結果,ヒトに対して“おそらく発がん性がある” とするランク2A*6 と発表10した。

IARCは同時に,有機リン系農薬4 種ダイアジノン,マラチオン,パラチオン,テトラクロルビンホスも発がん性ランク2A と発表したのだが*7,これらはほぼ報道されずにグリホサートに話題が集中した。

それは,グリホサートが世界で最も多く使用されている除草剤で,遺伝子組換え作物とセットで世界中で販売されていたためであろう。

さらに同年11 月,欧州食品安全機関EFSA がグリホサートには“おそらく(unlikely)ヒトへの発がん性はない” と発表11したため,その後混乱が続いている。EFSA とIARC は,基礎となる論文や情報元に違いがあること,EFSA はグリホサート製剤は別個に評価するとしたこと,EFSA の評価にはモンサント社の関与疑惑がもたれたことなどから,お互いに公開で意見を何度もやり取りしている。
IARC は発がん性ありとした根拠となる動物実験や疫学論文などを多数まとめて,92 ページにも及ぶモノグラフを公表している12。

この内容を見ると,多数の疫学研究を解析した結果,限られた証拠としながらも,グリホサート製剤曝露による発がんの可能性があり,とくに非ホジキンリンパ腫で相関があると記載している。また動物実験ではグリホサート/グリホサート製剤長期投与により腎臓がん,血管肉腫,悪性リンパ腫などが観察され,細胞レベルの実験からはグリホサート/グリホサート製剤によるDNA の損傷も報告されている。

グリホサートの主要代謝物アミノメチルホスホン酸AMPA(図2B)も,細胞毒性やDNA への影響が報告されている。これらの結果より,IARC はグリホサート曝露によりがんを起こす証拠があるとしている。