3:室内環境指標としての総揮発性有機化合物(TVOC) | 化学物質過敏症 runのブログ

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4 人体影響と基準値
表5 TVOCの仮説的量-影響の関係45)

濃度影響
200・g/m3以下快適レベル0.2~3mg/m3 多因子性暴露レベル3~25mg/m3 不快レベル25mg/m3以上毒性レベルM・lhaveらは空気質毒性の健康影響に関する文献値から仮説として量―影響の関係(表5)を示した45)。
ここでは多因子性暴露レベルは条件によっては不快になることを意味し,TVOCの測定にはFID付きガスクロマトグラフが推奨されている。

一方,Seifertはドイツでの実態調査からTVOCの平均値を求め,合理的に達成可能なレベルとして300・g/m3の指針値を提案した46)。

なお,日本の厚生労働省シックハウス問題検討会の暫定目標値400・g/m3もこのドイツの手法によっている1)。
ドイツではその後,要求水準に応じた2種のカテゴリー(RW2:既存の毒性学や疫学的な知見に基づいた健康影響の関連する濃度で,長期間在住する感受性の高い居住者に有害になる濃度と判断し,直ちに行動を起こすべき,RW1:長期間暴露しても健康影響を与える科学的な十分な根拠はないが,この濃度を超えると健康上望ましい平均暴露濃度を超える可能性があるので,できるならこの値をクリアすることを目指すべき)を設け,いくつかのVOCについてガイドラインが提案された47)。

TVOCについては漸減する特性をみて48)竣工後の時間経過によって3段階の指針値(表6)を設定し,しかも1.5~3倍の幅を持たせているのはTVOCの定義,測定法,毒性学的基準ではない(後述)ことなどから判断して極めて合理的な表示である。

一方,日本では建築学会規準ではどの段階でも400・g/m3をクリアするように努力するとしている。

なお,Seifertの提案ではTVOCのほか異なる化学分類(脂肪族炭化水素,芳香族炭化水素,テルペン,ハロゲン化炭化水素,エステル,アルデヒド/ケトン(ホルムアルデヒドを除く)その他アルコール)別にも評価されていた46)が,その後,「TVOCに加えて注目するべき化合物の化学分類も表記すべき」とされている47)。

TVOCを含む各国の規制の考え方やいきさつについては池田らが調査し49),東らの総説50)に詳しい。

表6に示した各国のTVOCのガイドライン値はこの総説から抜粋したものである。

成田が単位濃度(ppm)あたりの症状の重篤度を求めたところ(重篤度の臨床データは化学物質過敏症の診断を行うための世界共通の診断表(QUEESI)を用いた点数),粘膜症状はトルエン53.16(QUEESI/ppm),ホルムアルデヒド66.98,精神症状はそれぞれ71.96,57.88でトルエンよりホルムアルデヒドがやや高くなった51)というが,トルエンはTVOCの一部にすぎない。

一方,岸ら52)によればTVOCが10倍になったときに症状が増加する相対危険度はオッズ比で皮膚7.17(2.21),目10.68(2.96),いずれか5.35(1.96),(括弧内はトルエンが10倍になったとき)であった。

M・lhaveらも指摘しているようにTVOCが高いとIAQが低くなる可能性が大きくなる45)。

例えば,Norb・ck(1990)らの11のビルでの疫学調査53)はその一例であるが,TVOCに比例して症状を呈した人数は増え,個々の化学物質よりもTVOCとの相関性が高かったという。

ここで注目すべきは濃度が高くとも発症者は半分以下であり,0.1mg/m3以下でも発症者がいたことであろう。Gomesらの同様な報告54)もある。

一方,寝具から発生するホルムアルデヒドを含むVOCを調べた国民生活センターの報告書55)によればTVOCと臭気強度の間によい相関関係が見られたという。
表6諸外国におけるTVOCのガイドライン50