・出典:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
・星信彦氏(神戸大学先端融合研究環・農学研究科教授)
ここまで分かったネオニコチノイド系農薬の毒性
90年代にニコチンを元に開発されたネオニコチノイド系農薬(以下、ネオニコ)は、世界各地でミツバチ大量死を引き起こしたが、その後生態系への影響も広がっている。
アカトンボやミミズなど非対象生物への影響も報告されている。
そしてヒトも例外ではなく、今日ほとんどの日本人の尿からネオニコが検出されており、その検出量も年々上昇している。
目下、星研究室では環境化学物質やストレスが生体に与える影響やメカニズム解明の一環として、マウスなど哺乳類へのネオニコの影響に関する多角的な研究が進められている。
鳥類への影響―メスは産卵率が有意に低下、オスは精子にダメージマウスなどでネオニコが酸化ストレスを増加させることにより生殖器官に悪影響を及ぼすとする報告があり、星研究室では鳥類への影響を調べた。
生後7週齢のニホンウズラにクロチアニジン(商品名「ダントツ」など)を投与した結果、オスの精巣では DNA が断片化した生殖細胞数が有意に増加し、メスでは産卵率が有意に低下した。
ネオニコは鳥類の繁殖能力に直接影響を及ぼすことが初めて示された*1。
その研究成果が新潟県の佐渡市で役立った。同市では近年、トキを守るために生物多様性の保全に力を入れている。
星先生らの研究成果を受けて水稲へのネオニコ使用をやめた結果、2012年、36年ぶりにトキのヒナが野生下で誕生した。2016年には40年ぶりに「純野生」のヒナが誕生した。
哺乳類への影響
マウスの不安行動と異常蹄鳴
哺乳類への影響評価のために、マウスの脳神経系や行動への影響が調べられた。
普通、マウスは超音波(人には聞こえない)でコミュニケーションをとっているが、クロチアニジンを投与すると、異常蹄鳴、不安行動が発現した*3。