・出典:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
・食品香料6物質がアメリカで禁止に
事務局・ジャーナリスト 植田武智
近年、合成香料によって体調に異変が起こるという人たちが増えています。
公害ならぬ「香害」と名付けられ社会問題になっています。
香料には、香水をはじめ化粧品などに使われるフレグランスと、食品の香りづけに使われるフレーバーの2種類があります。
香害の原因として問題視されているのはフレグランスですが、今回アメリカで食品用の合成香料(フレーバー)6物質に対して発がん性を理由に使用禁止措置が取られました。
食品に使われるフレーバーは食品添加物として規制されていて、天然香料と合成香料に分かれます。
合成香料については現在のところ日本では、約3200種類以上の化学物質が使用許可リストに掲載されています。
食品香料の成分の多くは、果物の香りなど食品が本来持っている香りの成分をまねたものです。
また使用量も他の食品添加物と比べて微量なため、比較的安全性は高いと考えられてきました。
今回、アメリカ食品医薬品局(FDA)が禁止と発表したのは、ベンゾフェノン、アクリル酸エチル(エチルアクリレート)、オイゲニルメチルエーテル(メチルオイゲノール)、ミルセン、プレゴン、ピリジンの6物質。
ピリジン以外の5物質は日本でも使用可能なリストに入っています。
しかし表示では「香料」としか表示されないので、使われているのかは消費者にはわかりません。
アメリカで禁止された理由とは
今回なぜアメリカでこれら6物質が禁止されたのでしょうか。
実はアメリカの食品添加物規制の法律の中には、デラニー条項という特別なルールがあります。そこでは、用量の程度にかかわらずヒトまたは動物において、がんを誘発することが判明した食品添加物は許可が取り消されると定められています。
日本では、たとえある物質に発がん性が見つかっても、ある用量以下であれば安全だと評価されれば使用できる制度になっています。
今回6物質の禁 止を決 定したFDA でも、動物実験で示された発がん性は高用量で起きているので、実際に食品添加物として使用される量では公衆衛生上のリスクはないと判断しています。あくまで法律上の問題としてこれら6つの合成香料をリストから削除すると言っています。
デラニー条項のような規制がない日本では、禁止されることはありません。
ただし禁止措置を実施される2年後以降は、日本の食品でこれらの香料を含むものはアメリカには輸出できなくなるだけです。
微量でも危険な可能性はある
ではこれら禁止された6物質は安全といえるのでしょうか。
例えばベンゾフェノンは、日焼け止め化粧品の有効成分として多く使用されてきた成分ですが、環境ホルモン作用が指摘され近年使用されなくなってきたものです。
環境ホルモン作用は微量でも危険な可能性があります。
またアクリル酸エチルという成分は、接着剤やアクリル塗料の原料などにも使用されていますが、環境省によって「有害大気汚染物質に該当する可能性のある物質」に選定されています。
有害大気汚染候補物質が香料に使われているわけです。
微量だから安全とされて、揮発性が高いさまざまな化学物質が香料として使われているのが実情で、その中には有害性が指摘されているものあります。
香料成分の安全性の見直しが必要ではないかと思います。
使用量が少ないから安全と本当に言えるのか、評価の見直しが必要です。