ヘアダイによるアナフィラキシー例 | 化学物質過敏症 runのブログ

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出典:アレルギーっ子の生活

ヘアダイが健康に及ぼす影響-乳幼児が危ない!(2001/9/23)
ヘアダイによるアナフィラキシー例

 1999年7月のある日の午前11時、23歳男性がいつものごとく美容院で脱色・染色をしました。終わる頃より、首からじんましんが始まりました。上肢から背中、さらに全身と広がっていくため、午後19時30分坂総合病院受診し、副腎皮質ホルモン剤を点滴しましたが、よくならず、翌朝にはさらに悪化し、全身のじんましんと浮腫(むくみ)、かゆみがひどいため再度病院を受診しました。点滴中に呼吸が苦しくなり、アナフィラキシーと診断され入院となりました。副腎皮質ホルモン剤を点滴し数日後には症状改善しました。
アレルギー検査ではイネ科花粉にアレルギーがあり、ちょうどその頃は環境中に花粉が存在していたためアナフィラキシーの誘因になっている可能性がありました。直接的な原因は、経過からみて、染毛剤(ヘアダイに含まれるパラフェニレンジアミンの可能性が高い)によるアナフィラキシーと思われました。
 日本では1996年にFukunagaらが、ヘアダイ使用直後にアナフィラキシーを起こした57歳女性例を報告しています(文献1)。原因はヘアダイに含まれるパラフェニレンジアミン(以下PPD)でした。この女性は発病前8年間、ヘアダイで染毛していました。
インドでも2000年に2年間染毛剤を使用した後、染毛直後にPPDによってアナフィラキシーを起こした50歳男性が報告されています(文献2)。

ヘアダイに含まれる酸化染料パラフェニレンジアミン

 日本において、化粧品類は近年急速に低刺激性、低アレルゲン性(アレルギーを起こしにくい)のものが開発されてきており、化粧品による有害事例は減少傾向にあります。

しかし、永久染毛剤に含まれるPPDが原因となる接触性皮膚炎の例は増加傾向にあります(図、文献3:島井信子、海老原全、中山秀夫:化粧品のアレルギー、アレルギーの臨床20:1022-1028、2000より作成)。
増加の原因は、危険な化学物質が含有されていることを知らないまま、若者を中心に染毛剤を使用する機会が増えてきているためと思われます。
 PPDはかなり以前よりその危険性が指摘されている化学物質です。アフリカや中東、インド地域では結婚式などの行事において、ヘナ(豆科植物の葉から作った染料)で髪毛・手・足の裏などを染める習慣があります。

1863年からヘナの染色性を増強させるためにPPDが混合され始めました。

スーダンのハルツーム大学のハシムらが1992年に発表した報告では、1984年から1989年にかけて、染色剤に含まれるPPDによって2歳から15歳までの31例の小児が病院を受診しました。

全員が急激に進行する顔・口唇・喉粘膜の激しい浮腫を起こし(アナフィラキシー様の状態)、15例では呼吸困難が激しいため、気管切開(気管を切開し穴を開けてチューブを差込み、空気を肺に送るための手術)が必要でした。

13例は24時間以内に死亡しました。原因は12例が染色剤を誤飲、10例は意図的に飲んだ例、殺人目的が3例、皮膚からの吸収による例が6例でした(文献4)。
 また、1992年、イスラエルのリフシッツらの報告では、6歳の子供が喉のいたみ・咳・食欲不振を訴え、舌・喉・首のむくみによって呼吸困難となり治療しましたが、結局発病後2日目に死亡してしまいました。

この子の家で飼っている犬は、発病前に子供と同じ物を口にして数時間で死亡していました。

発病直前に口にしたものはヘアダイで、原因物質はヘアダイに含まれるPPDでした(文献5)。
 1988年、フランスのBourquiaらは18~35歳4例のヘアダイによる自殺企図者を経験し、PPDの販売を法的に規制すべきであると訴えています(文献6)。
 PPDは、少量の接触や飛沫の吸入で、接触性皮膚炎や粘膜の浮腫(むくみ)、結膜炎、鼻炎、気管支喘息など粘膜の障害を起こさせます。

間違って飲んだりなめたり、皮膚から体内に吸収されてしまうと、貧血(血液細胞が産生されなくなる再生不良性貧血を起こすとの報告がある)、腎臓障害、横紋筋融解(全身の骨格筋細胞が壊れてしまう)などの重篤な病気を起こさせます。
 また、ヘアダイに含まれるPPDやアミノフェノール、レゾルシンなどはメトヘモグロビン血症を起こします。

ヘモグロビンの鉄(Fe2+)が酸素と結合できない鉄(Fe3+)に酸化されたものをメトヘモグロビンといいますが、血液中のヘモグロブリン中1~2%以上になった場合をメトヘモグロビン血症といいます。

メトヘモグロビンには酸素が結合できないため、肺から取り入れた酸素を体内に運べません。

メトヘモグロビンが増加すると、顔の色が紫になり(チアノーゼ)、呼吸困難を起こします。新生児・乳児はメトヘモグロビン血症を起こしやすいことがわかっています。
  小さな子供がヘアダイを誤ってなめてしまった場合、最悪の場合は死亡する可能性もあります。

その他の毛染めの方法と起こりうる病気

 表に記載しました。含有する成分によるアレルギー反応や過敏症が問題になります。

毛染めをする場合の注意点

 大人の場合は、染毛を繰り返すたびにアレルギー反応が強くなり、あるとき突然症状が始まりますが、小児の場合は、化学的な激しい刺激によって初めての接触でも鼻が詰まり、喉がはれたり、呼吸困難を起こしたりする可能性があります。

とくに、新生児や乳児の場合、鼻が詰まっただけで呼吸困難を起こす場合があります。
  自宅にヘアダイ製品がある場合、子供がいたずらしないように厳重に保管する必要があります。新生児や乳児が染毛剤をなめたり触ったりすることは避けなければいけません。

染毛剤使用中に抱っこやおんぶをした場合、子供が染毛剤の付着した髪の毛をなめてしまう可能性があり、授乳婦、小さな子供がいる家庭ではヘアダイの使用を避ける必要があります。

もちろん、子供にヘアダイで染毛することは厳禁です。
  ヘアダイの使用で、貧血・メトヘモグロビン血症が起こると体内で酸素を運べなくなるため、胎児が低酸素状態になり、発達に影響がでる可能性があります。

したがって、妊娠中のヘアダイの使用は中止します。

  染毛剤を常時使用する理容従事者での被害が広がっており、早急な対策が必要です。
 ヘアダイに含まれるPPDは黒い色に染めるほど多くなるため、白髪を染めようとする初老の方はとくに注意が必要です。

この年齢は、化学物質で被害がおきやすい年齢でもあります。

白髪を染める場合、アレルギーがなければ、植物であるヘナ(ヘンナ)100%の染毛剤をお勧めします。