2:重症薬疹の病態と治療 | 化学物質過敏症 runのブログ

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代表的な重症薬疹であるSJS,TEN,AGEP の診断基準
SJS とTEN は,重症薬疹の代表的な臨床病型であり,両臨床病型の典型例を識別することは容易だが,日常診療の場ではしばしば両者の異同・重複・移行が問題となる.

SJS は,皮膚粘膜移行部を中心に粘膜疹が必発する表皮や粘膜上皮の壊死性障害を特徴とした重症の表皮型多形紅斑(EM)である.

一方,TEN は,粘膜疹を伴う広範な皮膚の紅斑・水疱・剝脱・糜燗をきたす表皮の壊死性障害を特徴とした最重症の表皮型EM であり,Roujeau ら2)3)は,両者の異同に関して,水疱・表皮剝離・壊死などの表皮障害性発疹の体表面積に占める比率により,10% 未満の場合をSJS,10~30% の場合をSJS-TEN の重複(SJS-TEN overlap),30% 以上の場合をTEN と分類することを提案している.

しかしながら,瀰漫性紅斑から進展したTEN はこれまで表皮障害性発疹の比率が10% 以上とされていることから,2001 年に組織された重症薬疹に関する厚生省の橋本研究班は,整合性をはかるために,10~30%のSJS-TEN overlap と30% 以上のSJS 進展TEN を区別しないで,どちらもSJS 進展TEN として,表1と表2 のようなSJS とTEN の診断基準(案)を提案している4).またTEN のサブタイプ分類としては,発症期の症状によりSJS 進展型,瀰漫性紅斑進展型,多発性固定疹進展型,その他の4 型分類が知られるが3)5),同研究班は,これをもっと簡素化し,表3 のような3型分類を提案している.

最近,human herpes virus 6型(HHV-6)の再活性化を伴うことで注目されているDIHS の診断基準6)については,別に紹介されるのでここでは省略する.

また特殊な膿疱型であるAGEPには,①広範囲にわたる浮腫性紅斑上に非毛囊性の膿疱が多発する皮膚症状,②表皮内又は角層下膿疱,表皮の局所的な壊死,真皮の浮腫,血管周囲性の好酸球浸潤,時に血管炎等の病理組織所見,③ 38℃ 以上の発熱,④ 7000ml 以上の好中球増多,⑤通常15 日以内に膿疱が消褪するといった特徴がある7).

それに従って,同研究班は表4 のような診断基準(案)を提案している.

原因薬剤はこれを報告したRoujeau ら7)によれば抗生剤が大部分(81.8%)で,DIHS と重複する薬剤は少ない.

しかし,HHV-6 の再活性化を伴い定型的な臨床経過を示すDIHS においても,AGEP に合致する様な浮腫性紅斑上に非毛囊性の膿疱が多発する症例8)―10)及びHHV-6 の再活性化がない代わりに同じヘルペス属のcytomegalovirus(CMV)の再活性化がDIHS やAGEP で見られる症例11)―13)が報告されている.

さらに,最近,HHV-6 再活性化が認められたSJSTEN の症例14)15)やHHV-6 の髄膜炎を併発したDIHS16)が報告されている.

従って,DIHS は,AGEPやSJSTEN を含めて,薬物アレルギーとHHV-6 やCMV の再活性化によるウイルス性中毒疹とのoverlap,原因薬剤の中止だけで軽快しない難治性薬疹の発症機序に新たな視点を与えるものとして注目されている.
TEN 早期のSCORTEN による予後推測(入院時判定)重症薬疹の予後判定を出来るだけ早く行うことは,重症薬疹の治療法の選択をする上で必要であるだけでなく,早期に得られた病歴・症状・検査所見から推測される予後と比較して実際に行われた治療の効果を相対的に評価する上でも必要である.そのためここではBastuji-Garin S ら20)やGuegan S ら21)によって提案されているTEN 特異的重症度スコア(SCORTEN)を紹介する.

これは,1:年齢(≧41 歳),2:悪性腫瘍の合併,3:頻脈(≧120min),4:入院時の体表面における表皮剝離面積(≧10%),5:血液中BUN 値上昇(>28mgdl)→基礎疾患や初期合併症としての腎障害,6:HCO3-値低下(<20mEql)→アチドーシス,7:血糖値の上昇(>252mgdl)→基礎疾患としての糖尿病のそれぞれの項目に合致する場合を,それぞれ1点とし,7 項目すべてに合致する場合,合計7 点となり,最高点となる.

表5 の如く,5 点以上は,推定死亡確率が0.6(60%)以上となり,推定死亡危険率は90と非常に高くなるとされている17).このスコアは,症状の進展具合にもよるが,一般的には,入院第3 日目に評価を行うのが最もよいとされている18).