・重症薬疹の病態と治療
横浜市立大学大学院医学研究科環境免疫病態皮膚科学
池澤善郎
Key words: IVIG ―― plasmaphereisis ―― SJSTEN ―― steroid puls
はじめに
最近,T 細胞の活性化機序において自然免疫や調節T 細胞が果たす重要な役割の研究が進むと共に,druginducedhypersensitivity syndrome(DIHS;薬剤性過敏症症候群)にhuman herpes virus-6(HHV-6)の再活性化(再燃)が高頻度に見られることから薬剤過敏症とウイルス感染の関係が注目され,重症型薬疹を中心に広く薬疹全体の病態や発症機序の捉え方に大きな変化の時を迎えている.
こうした薬疹の病態や発症機序に対する捉え方の変化は,これまで経験的に行われてきた重症型薬疹のStevens-Johnson syndrome(SJS)やtoxic epidermal necrolysis(TEN)の治療にも新しい視点を与えている1).
DIHS はこの専門医のためのアレルギー学講座「薬物過敏症」のトピックスとして特別に取り上げられている.
そこで,本稿では,まず重症薬疹について簡単に解説し,重症薬疹の中で,特にSJSとTEN に焦点を当てて,その診断基準,病態・機序,治療について解説する.
重症薬疹とは
重症薬疹とは,第1 に,発疹学的(臨床病型学的)な重症薬疹であり,第2 に,皮膚以外の臓器障害を合併していることであり,第3 に,その治療にステロイドの全身投与が必要なことであり(ステロイド要求性),第4 に,当初から又は経過中に感染症の合併があることであり,その一つでも満たせば,通常入院加療が必要となる.
発疹学的な重症薬疹の代表はSJS とTENであり,ほかにacute generalized exanthematous pustulosis(AGEP),紅皮症(ED)型,血管炎型,光線過敏症型なども,重症薬疹の指標として重視される皮膚以外の臓器障害,治療におけるステロイド要求性,感染症の合併を伴うことが多く,重症薬疹として入院を考慮した注意深い診療が必要となる.
抗痙攣薬のカルバマゼピンやヒダントイン,抗痛風薬のアロプリノール,サルファ剤のdiaminodiphnylsulfone(DDS)などの特定薬剤によるdrug-induced hypersensitivity syndrome(DIHS)は,当初は通常の斑状丘疹状紅斑(MP)型,多形浸出性紅斑(EM)型,湿疹(Ecz)型で始まるが,しばしば特異な顔面の発赤腫脹を伴ってED に進展し,時にAGEP のような臨床像を呈して,HHV-6 の再活性化と多臓器障害を伴うため,特異な重症薬疹として最近注目されている.
また蕁麻疹型薬疹は,呼吸困難やアナフィラキシーショックを来たして急患として来院されることがあり,その場合,血圧や気道の確保のために救急入院が必要となることが多いため,前述した重症薬疹とは違った意味で,重症薬疹として留意する必要がある.