原因薬の検査
アナフィラキシーの原因検索の方法には皮膚テスト,血液学的検査,投与試験がある.
投与試験が最も確実であるが,アナフィラキシーを惹起する可能性があり,危険性を伴うことが難点である.
血液学的な検査が最も安全であるが,薬剤特異IgE の検査はインスリンなどの限られた薬剤以外は不可能である.
また薬剤と末梢血好塩基球を用いたヒスタミン遊離試験は通常の医療機関では行うことが困難であり,臨床症状をどれだけ反映するかは不明である.
これらのことから皮膚テストは重要となる.皮膚テストはI 型アレルギーによるものの場合に有用であるが,特にセフェムおよびペニシリンでは皮膚テストで診断できるといって良い6)7).
皮膚テストにはオープンテスト,プリックテスト,スクラッチテスト,皮内テストがある.
この順に体内に入る薬剤量が増えるので,強いアレルギーが疑われれば濃度の薄い薬剤を用いてオープンテストから始めてこの順にテストを進めるべきである.
注射薬の場合は皮内テストを行うことが可能であるが,抗腫瘍薬のような皮膚に障害を与える可能性のあるものついては行うのは困難である.
アスピリン不耐症のような非アレルギー機序で起こる蕁麻疹型薬疹では再投与による誘発以外に良い検査法はないのが現状である.
重症の場合は口ふくみテストやうがいテストより始めて,ついで少量より内服を行う.
アスピリン投与試験の初回量は10―100mg が適当であろう.
ただし徐々に増量しながら投与試験を行う場合,急速減感作が起こって反応が出なくなる場合もある20).
治療
重要であるのは原因薬の投与を中止することである.
呼吸困難や血圧低下,意識消失を伴うアナフィラキシーでは直ちにエピネフリンの投与を行い,気道確保, O2 投与,輸液などの治療が行われるべきである.
エピネフリンは0.3―0.5mg を筋肉内注射することが推奨されている.エピネフリンの使用のタイミングについては食物によるアナフィラキシーの臨床的重症度が良い目安となると報告されている21)22).
その中では咽頭喉頭の瘙痒感絞扼感,嗄声,犬吠様咳嗽,嚥下困難,呼吸困難,喘鳴,チアノーゼ,不整脈,軽度血圧低下,呼吸停止,重度徐脈,意識消失などの症状があればエピネフリンを使用すべきであるとされている.
また以前にアナフィラキシー症状を誘発したと判明している薬剤を摂取したことが明らかであり,今後急速に進行しそうであれば,これらの症状がなくとも積極的にエピネフリンを使用すべきであろう.
ステロイドは速効性に欠けるので第一選択ではないが,遅発性の反応を抑制するとされており効果がないとは言えない.アナフィラキシーに対する抗ヒスタミン薬の効果については明らかではないが,血圧低下や意識消失を伴わない軽度の症状に対しては有効であろう.
また,どうしても原因薬剤の摂取が必要である場合は急速減感作療法によって原因薬剤の摂取が可能になることが報告されている5).