5:薬物過敏症のアレルギー機序とその検査 | 化学物質過敏症 runのブログ

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4)薬剤特異的in vitro 検査
様々な方法が提唱されているが最も広く行われているのは薬剤添加リンパ球刺激試験(drug-induced lymphocytestimulation test;DLST)である.

これは患者リンパ球を原因薬剤とともに培養することにより増殖させ,これをDNA 合成の増加を指標としてみる方法である.

薬剤添加群と非添加群のDNA 合成の比(に100 をかけた値)でみる方法である.

%で表され,180%以上を陽性としている.

それ自身でリンパ球を非特異的に増殖させてしまう薬剤や,逆に増殖を抑制する能力を持つ薬剤では行いにくいが,薬剤濃度をかなり低くして行うとある程度可能である.
DLST の信頼性は低いと思われてきたが,検査するタイミングを考えて行えば極めて有用な方法であることも分かってきた.

多くの薬疹では急性期を過ぎて行われることが多いが,実際にはDIHS を除き殆ど薬疹では発症後早く行うほど陽性になりやすい.

ステロイドの全身投与中は陽性になりにくいと思われていたが,薬剤に反応するT 細胞の頻度から考えても,ステロイドを使用している場合でも,急性期に行うほど陽性になりやすいのは当然と言えるかもしれない.

しかし例外的にDIHS では急性期は必ず陰性になり,発症2 カ月以上経過すると殆どが強陽性となる14).

しかも,皮疹消退後1 年以上たっても強陽性が続くため,DIHSでは極めて診断的価値が高い.
その他に薬剤特異的にT 細胞が産生するサイトカインを定量する方法があり,IFN-γ やIL-5 が用いられることが多いが,DLST と比べ余り普及しているとは言い難い.

 

おわりに
薬物過敏症と言いつつ,その殆どが薬疹の機序であり,薬疹の検査の話題に終始することになった.

それだけ薬物過敏症の多くが皮膚に表れるということなのか,あるいは他の臓器でも同じようなことが起こっているのに見つけられないだけなのだろうか.

筆者には,後者の可能性が極めて高いように思える.

薬疹ですら,興味を持っている病院とそうでない病院ではその発症率に大きな差があることを考えれば,他臓器で起こっている薬物過敏症の多くは,原因薬を特定しようという意欲がなければ,特発性○○病と診断され難治化しているのではないかと推測する.

皮膚と他臓器の構造の類似性を考えると,薬物過敏症が皮膚にのみ優先的に生じているとみなすのは極めて難しいように思われる.
1.薬物過敏症のアレルギー機序とその検査に関する問題
1-1.次のうち薬剤性過敏症症候群に特徴的にみられる症状,検査所見はどれか.
a 皮膚,粘膜の水疱,ビラン
b 間質性肺炎
c 自己抗体の出現
d 6 型ヘルペスウイルスの再活性化
e 血清IgE上昇
1-2.薬剤特異的in vitro 検査に関して正しいのはどれか.
a 原因薬内服中は検査できない
b 全ての薬疹は皮疹が消退した後に検査すべきである
c ステロイド内服中には検査できない
d 一般的には急性期の方が陽性になりやすい
e 陰性の場合には原因薬ではないと考えて良い
専門医のためのアレルギー学講座問題の解答
第2 回薬物過敏症
「1.薬物過敏症のアレルギー機序とその検査」:塩原哲夫
1―1.正解d
1―2.正解d