6-第3回 悪臭の対策技術(脱臭装置に頼らない対策 | 化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです

2-5 製造方法を変更する
次に畜産農家の糞尿の問題を検討してみよう。昔は家畜の糞尿を直接農地に散布することも多く、近隣の悪臭被害は大きかったが、現在では糞尿から堆肥(肥料)を作る方法が積極的に行われている。糞尿から堆肥を製造する方法にも各種の方法がある。

このような堆肥の製造方法を、悪臭対策の観点から見直してみることも重要な悪臭対策になる。
近年、畜産農家に対する悪臭苦情が大きな問題になるケースがあるが、その原因の一つに、家畜が排出する糞尿の堆肥化の方法が間違っているからである。

基本的には、糞尿を堆肥にするには、微生物(菌)に頼り、家畜の糞尿を発酵させ、近隣の農家にとって有用な堆肥(肥料)を製造するが、製造方法には、大きく二つの方法がある。
① 空気を遮断し、嫌気性菌によって糞尿を分解し堆肥を作る方法
② 積極的に糞尿に空気を送り、好気性菌によって堆肥を作る方法
図-7 糞尿を野積みし、嫌気性菌で堆肥化 写真5 毎日攪拌し、好気性菌で堆肥化
①の方法は、糞尿を高く(数mから 10mほど)野積みし、数か月に1回程度、攪拌する方法で、嫌気性菌により糞尿を分解するため、臭気の発生は激しく、近隣に大きな悪臭被害を及ぼすことも稀ではなかった。

一般的に嫌気性菌は好気性菌と比較して、極端に悪臭物質を排出するため、悪臭対策としては好気性菌による方法が望まれていた。

現在は図-7で示すように②の製造方法が多く使われるようになってきた。

この方法は1日1回程度、糞尿を自動的に攪拌し、良好な堆肥を短期間(2、3か月)で製造できるようになるとともに、悪臭被害も少なくなっている。
このように家畜の糞尿から堆肥を作る方法を変更することによって、悪臭被害も低減可能である。この他、図-8に示すように畜産農家で常時、堆肥に空気を送り、積極的に良好な堆肥の製造を行っている畜産農家もある。
図-8に示した方法は、糞尿の下から空気を送り込み、発生する悪臭を建屋の上部から引き抜き、脱臭する方法である。この方法で家畜の糞尿から堆肥を製造している農家も多い。

この方法は建屋の中がひどい環境になり、中で作業する人は過酷な状況になる。
悪臭は強く、温度も上がり、建屋の構造物の腐食も激しくなる。また、建屋の漏れから近隣に悪臭被害をもたらすケースも多い。
これに対し、図-9は堆肥の下から空気(悪臭)を吸い込み処理する方法である。

この方法では建屋内の悪臭はほとんど少なく、建屋から悪臭が漏れることはほとんどない。
このように送気式にするか、吸引式にするか、空気を送り込む方法を変えるだけで、悪臭対策につながるのである。