2-4 既存の他の装置を利用する
新たに脱臭装置を導入するのではなく、工場内にある既存の施設を利用することも有効な悪臭対策になる場合がある。
例えば、大規模な工場としては、清掃工場が挙げられる。
清掃工場ではごみ収集車が生ごみを集めて清掃工場に運び、プラットホームからごみピットにごみを数日間溜めておく、ごみピットに溜められた生ごみからの臭気は強く近隣の住民は、昔はこのにおいに悩んだが、現在ではこの問題は解決している。
ごみピットからのにおいを吸引し、清掃工場の焼却炉の助燃空気として 800℃以上で燃焼分解しているのである。
すなわち、ごみ焼却炉ではごみは自燃で燃えているが、燃焼に必要な空気の代わりにごみピット内の臭い悪臭を利用しているのである。
この考え方を利用すれば事業所内にボイラを持っている事業所は、ボイラが必要な助燃空気の代わりに、処理したい悪臭を使えばよい。
爆発限界を超えていなければ臭気の濃度はいくら濃くてもかまわない。
魚腸骨処理工場、獣骨処理工場などの化製場においては工場内で発生する強い悪臭をボイラの助燃空気として燃焼分解して脱臭している。
また、鋳物工場においては、高温に溶かした鉄やアルミニウムを型に注入し鋳物を作るが、溶かした金属を型に注入する際に強烈な臭気が発生する。
どこの鋳物工場でもこの臭気の対策に頭を痛めるが、発生する臭気を局所的に集め、金属を溶かす炉の助燃空気として活用することも、経費があまり掛からない対策である。
さらに食品工場や畜産施設などにおいては、工場内に排水処理施設を有している事業所も多いが、この排水処理施設も悪臭対策に活用できる。
これらの事業所においては、各自治体の排水規制基準値をクリアするために、排水処理装置が付設されており、一般的には活性汚泥法を採用している。
活性汚泥法は水中の微生物により排水中の有機分を分解して、排水を浄化している。
このような施設では、微生物の活性を図るため処理槽に、図-6に示すように通常の空気を送っている。
このように排水槽の中は微生物が豊富に存在するので、この中に通常の空気ではなく、処理したい悪臭を入れてあげれば一石二鳥である。
今まではただ単になる空気を送っていたが(エアレーション)、処理したい悪臭があるなら、その悪臭を空気の代わりに排水槽に送ってあげればよい。悪臭は排水槽中の微生物によって分解され、においは軽減する。
これもほとんど経費の掛からない対策である。
以上のように既に工場にある各種の施設(ボイラ、排水処理槽、各種の炉など)を活用し、脱臭装置として活用する方法は、経費もほとんど掛からず有効な悪臭対策になる。