4 -第3回 悪臭の対策技術(脱臭装置に頼らない対策 | 化学物質過敏症 runのブログ

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2-3 排出口の向きを上向きに以上のように工場においては、悪臭対策として、空気による希釈効果を狙った煙突を備えている。

多少専門的になりすぎるかもしれないが、悪臭対策として使われる煙突(排気口)には、図-3に示すように、上向き、横向き、下向き、T字、H型、陣笠など排出口の向きはいくつかのタイプのものが使われている。

これらの中で、悪臭対策としては、一般的には上向きが最も適しており、他のタイプは必ずしも最適な構造とはいえない。

上向き以外のタイプは、臭気が上空に高く舞い上がること、すなわち高い希釈効果を妨げているからである。

しかし、現実には、上向き以外の排出口があまりにも多く、悪臭対策上は大きな問題を残している。
このようなミスは中小工場に限らず、大工場においてもみられる傾向である。

私も多くの工場をみてきたが、この排出口の向きを改善しただけで、悪臭問題が解決した事例も多い。

単純な、ごく当たり前の対策ではあるが、意外と気づかれていない。
次に、なぜ上向き以外は不適当かというと、上向き以外はどれも排出される臭気の希釈効果を抑えてしまっているからである。排出口からの臭気の上昇力は排出口から出る臭気の温度と上空への運動量すなわち速度に依存する。
すなわち 臭気の希釈効果 = 排ガスの温度による効果 + 上空への運動量(速度)で表される。
温度については、図-3 のどれもほとんど変わらないと思うが、運動量すなわち上方への速度は、まったく異なる。

上向きは上昇力をそのまま維持し、上空まで臭気を運び、希釈効果が十分期待できるが、横向きでは上空への上昇力を全く抑えてしまうことになる。

希釈効果は排出臭気の温度に頼るだけである。まして排出口が下に向いているケースでは、近隣に臭気をまき散らしている状態で、悪臭対策としては全く不適当である。

H型、T型、陣笠も同様に不適当である。
現在でも、全国の事業所で敷設されている排出口は、上向き以外の横向き、下向きなどが多い理由は、上向きでは雨が入ってきてしまうという事業者の心配であり、誤解でもある。

確かに上向きにすると、雨が排出口の中に入ってファンなどを痛めてしまうという事業者の心配も分かるが、図-4 に示した対策で十分である。
臭気排出口の向き及び構造を変更する対策すなわち、排出口に入った雨水を、外に落としてあげれば簡単に解決する。

図-4 のようにドレンポットを置いてもよいが、場所によっては、煙突の下部に直径 1cm程度の穴をあけておけば雨水の問題は心配いらない。
これらの対策の一例として、あるゴム工場の煙突を改善した事例を写真4に示す。

以前は排出口の高さも低く、排出口の向きも横向きであったが、排出口の高さを多少上げ、向きを上向きにした事例である。

このような簡易な対策で悪臭被害の影響は半減した。
次に多くの自工場では屋根の一部にファンを取り付け、工場内の悪臭を屋根から外へ排気している工場も多い。

このような工場では屋根に付けられたファンから雨が入らないようにカバーをしてカバーと屋根の隙間から工場内の臭気を排出しているこの場合、図-5の改善前の図のように、排出された臭気の上昇力を抑えてしまうため、排出された悪臭は屋根を伝わり、近隣に降下し、悪臭被害を及ぼすことになる。
それに対し改善後はファンによる臭気の上昇力を抑えることなく、臭気は上空で拡散するため、悪臭被害は低減できる。

現場でもこのような改善により悪臭被害を解決した事例がある。

さらに改善後はファンの抵抗が弱まるため、ファンの電力量の削減にもつながるメリットがある。
以上のように、排出口は必ず上に向け、排出される悪臭を上空大気で拡散希釈し、においを感じなくする手法が最も経費が掛からず有効な方法である。