・シリーズ「悪臭に関わる苦情への対応」
-第3回 悪臭の対策技術(脱臭装置に頼らない対策)-
公益社団法人 におい・かおり環境協会
前会長 岩崎 好陽
1 はじめに
毎日の生活の中で、かおりを楽しむのは快いが、時には不快なにおいに悩むこともある。
このように生活に影響する悪臭を除きたいのは当然であり、昔から人間は生活の中で知恵を働かせ、悪臭対策を行ってきた。
便所の近くにはキンモクセイなどのかおりのある木を植えたり、また葬儀において香を焚くのも、元はにおい対策といわれている。
近年、環境問題が重要視されてくると、工場の悪臭が周辺住民にとって大きな問題になる。
悪臭影響の指標でもある悪臭苦情件数も全国で毎年1万数千件程度 ※ ) 発生している。
このような状況の中で、悪臭を排出する工場の周辺に住む人々にとっては、工場から排出される悪臭をできるだけ減らして欲しいと願うのは当然である。
また、このような悪臭苦情を抱えている工場の経営者にとっては、自分の工場から排出される悪臭をどのように減らしていくかを検討しなくてはならない。
場合によっては工場の死活問題にもつながる重要な問題となる場合もある。
悪臭対策というと、悪臭物質を高温で燃焼して脱臭する燃焼脱臭装置を導入するとか、活性炭などを用いて、悪臭物質を吸着して脱臭するとか安易に脱臭装置に頼ることをすぐ考えてしまう方も多いと思うが、この考え方は必ずしも正しくない。
上記に述べた燃焼脱臭装置や活性炭吸着装置は比較的高価であり、事業者が簡単に導入することは難しいからである。
イニシャルコストのみならず、ランニングコストも高額になり、大企業であればともかく、中小事業所においては難しい課題が残る。
そこで、これらの高価な脱臭装置に頼らずに、工場において安価な悪臭対策はないのであろうか。私は今までに多くの悪臭現場を見てきたが、現場では脱臭装置に頼らずに、悪臭問題を解決している事例が多くあることが解る。
ちょっとした工夫で悪臭問題が解決できることがある。
具体的には
・悪臭の発生をできるだけ抑制すること、すなわち悪臭の元を断つこと。
・発生した悪臭を排気口を高くしたり、向きを変更することにより薄めてしまうこと。
・工場内にある施設(ボイラ、排水処理槽など)を活用して、脱臭すること。
・製造方法を変更し、悪臭が発生しにくい製造工程にすること。
・その他
などの方法である。
ここでは、悪臭問題が発生したときに、高価な脱臭装置の導入を検討する前に、検討すべき手法について、少し詳しく解説したい。