・出典:総務省㏋
・http://www.soumu.go.jp/main_content/000452167.pdf
シリーズ「悪臭に関わる苦情への対応」-第1回 においの特徴と悪臭公害の現状-
シリーズの連載にあたって
地方公共団体に寄せられる公害苦情相談に対応する担当者向け資料として、本誌第 65 号か
ら全8回にわたりシリーズ「騒音に関わる苦情とその解決方法」を、第 73 号から全8回にわたり「振動に関わる苦情への対応」を掲載しました。
今回は、悪臭に関する資料として、公益社団法人におい・かおり環境協会 岩崎好陽会長
にシリーズ「悪臭に関わる苦情への対応」として全4回にわたり、執筆いただきます。
○シリーズ「悪臭に関わる苦情への対応」
-第1回 においの特徴と悪臭公害の現状-
公益社団法人におい・かおり環境協会
会長 岩崎 好陽
1. はじめに
大昔、文明が発達していなかった時代には、人間にとって嗅覚は、最も重要な器官であったが、現代人はあまり嗅覚を使わなくなったといわれている。
しかし、現在でも私たちにとって嗅覚は重要な器官であることは間違いない。
ガス漏れを鼻で検知することにより、未然に事故を防ぐこともできる。
また、近隣の事業所などからの悪臭を感じ、日常生活に影響が及ぶ場合には、当該事業所や所管の行政に悪臭苦情として改善を求めることになる。
この悪臭公害は、騒音・振動公害と並んで感覚公害の一つである。
騒音・振動公害がその発生メカニズム、計測関係、対策手法などについて比較的科学的知見が豊富なのに対して、
悪臭公害は残念ではあるが、現状では科学的知見は少ない。
そのため、各地の悪臭公害の現
場では、地方自治体の担当者の対応が難しく、解決に苦しむことも多い。
この悪臭公害に取り組むうえで、まず基本となる「におい」の特徴を理解することが必要である。そのため、ここではにおいの特徴を比較的わかりやすく解説した。
さらに、悪臭公害の原点でもある悪臭苦情の現状と悪臭規制の法体系についても記載した。
2. においの特徴
2-1 においは低濃度多成分の混合体
まず、悪臭公害の基本である「におい」の特徴を記載したい。
においとか香りとかは、いったいどういうものなのであろうか。
においの中身を、ガスクロマトグラフィーなど最新の分析機器で調べてみると、においは沢山の化合物(におい分子)で構成されていることがわかる。
化合物とは、アンモニアであるとか、硫化水素、トルエンなどの物質であり、それらは単独でも特有のにおいを持っている。
アンモニアはつんとする刺激臭がするし、硫化水素はゆで卵のにおいがする。
また、トルエンはシンナーのようなにおいがする。
においのある化合物をにおい分子ともいう。私たちが普段嗅いでいるにおいとは、図-1に示すように、それらの化合物が何十種類も、何百種類もが混じった混合体であることがわかる。
図-1 においは多成分の混合体
現在、地上に存在する約 200 万種類といわれる化合物のうち、約 40 万種類の化合物はにお
いを持っているといわれている。
焼き肉のにおいでも、タバコのにおいでも、花の香りでも、私たちが日常生活で嗅いでいるにおいは、これらの化合物が数十種類、数百種類集まった混合物といえる。
単一の化学物質で構成されているにおいは、私たちの身の回りではほとんどない。
学校の理科室で嗅ぐ試薬のにおいか、工場で使う薬品臭ぐらいのものかもしれない。
現在問題になっている悪臭公害の現場のにおいも、当然多成分の混合体である。
このにおいの大きな特徴は、においの測定法の難しさにつながるのであるが、その測定方法については次回に記載することにする。