9.5 ゴルフ場で使用される農薬による水質汚濁の防止及び水産動植物被害の防止に係る指導指針
平成 29 年 3 月 9 日環水土第 1703091 号各都道府県知事宛
環境省水・大気環境局長通知
1 基本的考え方
ゴルフ場で使用される農薬による水質汚濁及び水産動植物被害を未然に防止するため、農
薬の使用に当たっては、農薬取締法(昭和23年法律第82号)に基づき安全性評価がなされた
登録農薬の適正使用や使用量の削減等について指導が徹底される必要があるが、その際、こ
れらの指導の実効を期す上で、ゴルフ場から排出される水に含まれる農薬の実態把握に努め、
その結果に基づき、必要に応じて随時、ゴルフ場に対して適切な改善措置を求めることとする
ことが肝要と考えられる。
このような観点から、現状の知見等からみて可能な範囲で水質汚濁及び水産動植物被害の
未然防止に資する対処の方策を明らかにし、地方公共団体が水質及び生態系保全の面から
ゴルフ場を指導する際の参考となるよう、本指導指針を定めることとしたものである。
これに当たり、農薬取締法第3条第1項第7号に基づく水質汚濁に係る農薬登録保留基準
(平成 20 年環境省告示第 60 号において定められているものに限る。以下「水濁基準値」とい
う。)及び同項第6号に基づく水産動植物被害に係る農薬登録保留基準(平成 18 年環境省告
示第 143 号において定められているものに限る。
以下「水産基準値」という。)の設定が進められていることから、当該水濁基準値及び水産基準値に基づきそれぞれの指針値を設定することとする。
また、別表に示した農薬は、水濁基準値の設定がないが、現在得られている知見等を基に
人の健康の保護に関する視点を考慮して設定した排出水中の水濁に係る暫定指導指針値で
あり、水濁基準値が設定されるまでの間は、これを水濁指針値として適用する。
なお、今後、実態の把握の進捗や関連する科学的知見の集積等によって、必要に応じ、指針
の改定があり得るものである。
2 指導指針
(1)農薬使用状況等の的確な把握
水質及び生態系保全の面からゴルフ場を指導する際には、これに先立って農薬の使用状
況やゴルフ場内の集排水系統、排水処理施設の現状、接続する河川、利水施設等ゴルフ場
周辺水域の状況等に関する実態を的確に把握することが必要である。
このため、農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令(平成 15 年3月7日農林水産省・環境省令第5号)第5条に基づき提出されるゴルフ場における農薬使用計画書を活用するとともに、関係行政部局、市町村、団体等の協力分担の下に、管内ゴルフ場関係者との間の連絡協議を密にして、必要な資料の収集整理に努めるものとする。
(2)農薬流出実態の調査
ゴルフ場周辺の水域に対する水質汚濁及び水産動植物被害を未然に防止する観点から、
(1)により把握した情報を踏まえ、ゴルフ場から排出される水(以下「排出水」という。)に含ま
れる農薬の残留実態を調査し、これらの結果から所要の指導の一層の徹底を図ることとする。
このため、農薬の流出実態の調査は、排出水がゴルフ場の区域から場外の水域に流出する地点(以下「排水口」という。)において、農薬濃度が高い状態になると見込まれる時の排出水について実施することを基本とするものとする。
その際、ゴルフ場の構造等によって排水口における調査が困難な場合には、場内の調整池、排水路のほかゴルフ場下流の河川等を含め、ゴルフ場からの農薬の流出実態が適切に把握できると認められる地点において適宜行う。
また、調査の実施に当たっては、一般に使用農薬の種類や使用の時期、方法等が病害虫及び雑草の種類、発生時期等に応じて地域により多様であるほか、排出水中への農薬の流出は、農薬の種類、使用方法や現地の地形、土壌、集排水系統等の状況によって異なること等に十分留意する。