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可塑剤・難燃剤等による室内空気汚染の実態とその曝露量評価
斎藤 育江,大貫 文,矢口 久美子,小縣昭夫
東京都健康安全研究センター研究年報 第59号 別刷
2008
可塑剤・難燃剤等による室内空気汚染の実態とその曝露量評価
斎藤 育江*
,大貫 文*
,矢口 久美子*
,小縣昭夫**
東京都内の住宅,オフィスビルの室内空気及び外気の半揮発性有機化合物(SVOC)実態調査結果(1999年~2002年)を総合的に解析し,得られた統計データより空気由来のSVOC曝露量を推計した.

実態調査では,空気中から40物質のSVOCが検出された.

次にそれらのうち一日許容摂取量(ADI)または耐用一日摂取量(TDI)等が示されている24物質について,空気由来の曝露量最大値がADI,TDI等に占める割合を推計した.

その結果,ADI,TDI等に占める空気由来曝露量の割合が最も大きかった物質は,難燃剤のリン酸トリス(2-クロロイソプロピル)で,主婦:89%,会社員:58%と算出された.
キーワード:室内空気,半揮発性有機化合物,フタル酸エステル類,リン酸エステル類,クロルデン類,ビスフェノールA,アルキルフェノール類,有機リン系殺虫剤,臭素系難燃剤,曝露量

 

はじめに
世界保健機関(World Health Organization:WHO)は,室内空気の汚染源となる可能性のある有機化合物について,沸点による分類を行っており,沸点が50-100℃~240-260℃の物質を揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds:VOC),240-260℃~380-400℃の物質を半揮発性有機化合物(Semi-Volatile Organic Compounds:SVOC)と定義している1).

室内空気中のVOCについては,シックハウス症候群の防止策に関連して,多種類の物質を同時に分析する公定法が示されており2),これまでに多くの室内濃度データが報告されている.

しかし,室内空気中のSVOCに関する測定法は,フタル酸エステル類及び有機リン系殺虫剤以外には公定法が示されておらず2),多種のSVOCに関する実態把握が十分とは言い難いのが現状である.
SVOCに属する物質では,近年,可塑剤のフタル酸エステル類が内分泌かく乱作用を示すことが明らかになり3-5),その他,ビスフェノールA,ノニルフェノール,臭素化ジフェニルエーテル等,多くの物質にも内分泌かく乱作用があることが報告された.

また,シックハウス症候群及び化学物質過敏症との関連が疑われている有機リン系殺虫剤及びリン酸エステル類も同様にSVOCに属する.

したがって,これらの化学物質のリスク評価のためには,食事や飲料水に加え,空気からの曝露量を推計することが不可欠と考えられる.
本研究では,1999年~2002年に東京都内で行われた空気中SVOCの実態調査をまとめ6-13),住宅,オフィスビルの室内空気及び外気におけるSVOC60物質の調査結果を概説する.

また,得られた測定データより主婦及び会社員のそれぞれについて,空気由来のSVOC曝露量最大値を推計し,一日許容摂取量(Acceptable Daily Intake:ADI),耐用一日摂取量(Tolerable Daily Intak:TDI)及び食事由来曝露量との比較を行った結果について紹介する.
調 査 方 法
1. 対象物質
 フタル酸エステル類10種(フタル酸ジメチル,フタル酸ジエチル,フタル酸ジイソプロピル,フタル酸ジ-n-プロピル,フタル酸ジイソブチル,フタル酸ジ-n-ブチル,フタル酸ジヘキシル,フタル酸ジ-2-エチルヘキシル,フタル酸ジシクロヘキシル,フタル酸ブチルベンジル),リン酸エステル類11種(リン酸トリメチル,リン酸トリエチル,リン酸トリプロピル,リン酸トリブチル,リン酸トリス(2-クロロイソプロピル),リン酸トリス(2-クロロエチル),リン酸トリス(2-エチルヘキシル),リン酸トリス(ブトキシエチル)リン酸トリス(1,3-ジクロロ-2-プロピル),リン酸トリフェニル,リン酸トリクレシル),ビスフェノールA,アルキルフェノール類7種(4-t-ブチルフェノール,4-n-ペンチルフェノール,4-n-ヘキシルフェノール,4-t-オクチルフェノール,4-n-ヘプチルフェノール,4-n-オクチルフェノール,4-ノニルフェノール),臭素系難燃剤14種(4,4’-ジブロモジフェニルエーテル,2,4,4’-トリブロモジフェニルエーテル,2,2’,4,4’-テトラブロモジフェニルエーテル,2,2’,4,4’,5-ペンタブロモジフェニルエーテル,2,2’,4,4’,6-ペンタブロモジフェニルエーテル,2,2’,4,4’,5,5’-ヘキサブロモジフェニルエーテル,2,2’,4,4’,5,6’-ヘキサブロモジフェニルエーテル,2,2’,3,4,4’,5’,6-ヘプタブロモジフェニルエーテル,デカブロモジフェニルエーテル,2,4,6-トリブロモフェノール,ペンタブロモフェノール,ヘキサブロモベンゼン,テトラブロモビスフェノールA,ヘキサブロモシクロドデカン),有機リン系殺虫剤9種(ジクロルボス,ダイアジノン,ジクロフェンチオン,クロルピリホスメチル,メチルパラチオン,クロルピリホス,フェニトロチオン,マラチオン,ピリダフェンチオン),ペルメトリン,フェノブカルブ,DDT2種(o,p’-DDT,p,p’-DDT),クロルデン類4種(trans-クロルデン,cis-クロルデン,trans-ノナクロル,cis-ノナクロル),合計60物質.