・https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjh/73/2/73_116/_pdf
科学的エビデンスに基づく『新シックハウス症候群に関する相談と対策マニュアル(改訂新版)』を作成して
岸 玲子 1,2,吉野 博 3
,荒木 敦子 1,2,西條 泰明 4
,東 賢一 5
,河合 俊夫 6
大和 浩 7
,大澤 元毅 8
,柴田 英治 9
,田中 正敏 10,増地あゆみ 11,湊屋 街子 1,2,
1.「科学的エビデンスに基づくシックハウス症候群に関する相談と対策マニュアル(改訂新版)」について
(1)旧版のシックハウス症候群に関する相談と対策マニュアルの発行
住空間や室内環境と健康影響を考えるうえで人々の生活と安全を基礎にした公衆衛生研究の視点は重要である。
中でも原因の科学的な解明のためには疫学的に妥当な研究方法に基づく研究の成果と,それらの根拠ある科学的なデータの長年の蓄積を抜きに確実な予防方策を樹立することは難しい。
そこで,著者らは,厚生労働科学研究費の補助金を得て,「シックハウス症候群に関する相談と対策マニュアル」を作成し出版した。
全国 6 地域での疫学調査を実施した班研究のメンバーが,これまでの研究の成果をとりまとめる形で内外の知見を整理した。
目的は地域の保健所などで相談にあたる担当者や第一線の医師などへの学術的支援という位置づけで,2009 年に厚生労働科学研究のまとめとして保健所などに配布された。
また一般向けには日本公衆衛生協会からも出版刊行した (1)。
(2)科学的エビデンスに基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂新版)の発行作業しかし,その後,既に 10 年近く経過し,日本での調査結果も海外の専門誌に多数,掲載され,疫学評価として内外で知見が確立されことから,平成 26 ~ 27 年度,新たに厚生労働科学研究費補助金(健康安全・危機管理対策総合研究事業)を受け,「科学的エビデンスに基づく新シックハウス症候群に関する相談と対策マニュアル」として改訂作業を行った。研究班を組織し直し,従来の衛生・公衆衛生学,環境疫学,産業医学の専門家に加えて,建築家やリスク心理学の専門家も加わり室内環境と健康の関係について最新の研究成果を,医学および建築学の両面からできるだけ詳細にかつわかりやすく書くように努めた。
科学的エビデンスに基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂新版)(以下,相談マニュアル(改訂新版)(2) では,近年震災や豪雨等の災害に伴って入居者が増えている仮設住宅の問題や,地球温暖化で毎年繰り返されるようになった熱中症と室内環境などの最近の問題,電磁過敏症に関する系統的レビューについても記載した。
空気的な環境問題のみならず昨今の地球温暖化による温熱環境の悪化も考慮して記述対象とし,快適で健康な建物を実現する上で必要な基礎的な理論,設計の考え方と方法,建物の使い方,設備の調整の方法や扱い方についても解説した。
この改訂された新マニュアルの主たる対象者は,保健所・市町村などの住まいの窓口相談業務従事者,学校,職域などで衛生管理に携わる方,あるいは地域の医師,さらにはハウスメーカーなど建築関係の方々を含めている。
国民のシックハウス症候群に関する正しい知識の普及と,種々の相談に対して科学的根拠をふまえた回答により,現場で役立ち多くの人に活用されることを願って作成した。全体で 240 ページの全体構成は Appendix 1 の通りである。
なお,さらに実際に市民からの質問や相談を受ける際にどのようなことを知っておくといいのか?
その基本的な答えや説明の方法を相談フローチャートとして工夫した。
(Appendix 2)マニュアル巻末には,具体的な内容別相談と回答例【Q&A】42 項目と,各種資料(室内濃度指針値,建築基準法,その他のガイドライン,地方衛生研究所一覧など)も記載した。参照文献は 146 編,引用文献 91 編,参考 web が 6 件,合計 243 編をあげた。
2017 年 3 月には厚生労働省 HP にアップされて,アクセス・ダウンロードができる (2)。
runより:いつも通り報告書PDFは長いので数日お付き合いくさだいね((。´・ω・)。´_ _))ペコ