・出典:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
・香害のもう一つの原因?香料の「光毒性」
理事 水野玲子
2008年頃から、におい被害(香害)がたくさん報告されるようになりました。
その頃流行り始めたのが柔軟剤です。
隣の家から流れてくる柔軟剤のにおいによって体調を崩す人、耐えられない人が後を絶たず、増え続けています。
香害の原因はほとんど解明されていませんが、柔軟剤のにおいに苦しむ人が多いことから、そこに添加されている香料にも何らかの原因があると予想されます。
今回は、香料の光ひかりどくせい毒性―柔軟剤を使った洗濯物が日光(紫外線)にあたったときに空気中で起きる香料成分の酸化などの変化―を考えてみます。
光毒性が疑われているアロマの精油も
香料なかには光毒性のある成分があることをご存知でしょうか。
例えば、ベルガモット油が入った香水やオーデコロンを付けて日光にあたり、皮膚に黒斑が出るなどの症状が多く報告されています。
それはベルガモットに含まれるフロクマリン類が引き起こす光毒性作用です。
アロマセラピーで使用される天然のエッセンシャルオイル(精油)の柑橘系、ハーブ系のアロマには、そうした光毒性を持つものがあります。
香料の一般名称でいえば「ベルガモット」「アンジェリカ・ルート」「レモン」「グレープフルーツ」「ライム」など*1です(これらの精油の中には、光毒性を排除した精油「ベルガモットFCF」や「レモンFCF」が開発されています)。
普通、精油は1%以下に希釈してマッサージなどに使われますが、うっかり原液あるいは濃度が高いものを肌に塗って紫外線にあたると、皮膚を損傷します。
日焼け、軽いやけど、シミなどです。
光毒性のあるフロクマリン類は、単体で毒性があるのではなく、細胞の紫外線に対する感受性を高め、紫外線を吸収しやすくするので体質に関係なく皮膚を傷つけます。
香料の約95%は合成香料
それではアロマの精油ではなく、柔軟剤など家庭用品に使われる香料はどうでしょうか。
香料には天然香料と合成香料がありますが、「天然なら安全、合成は危険」と単純に考えるのは早計です。
日本香料工業会の香料統計によれば、2017年度の香料国内生産の約95%が石油などから作られる合成香料です。
合成香料は、「単離香料」「半合成香料」「合成香料」に分けられますが、天然と合成の区別はそう簡単ではありません。
単離香料とは、天然の植物などから蒸留や抽出、結晶化などの手法によって、ある成分だけ取り出したものですが、単離された芳香分子も物理的・化学的処理をされているために、じつはわが国では合成香料に分類*2されています。
アロマの精油も溶剤で抽出すると、たとえ花や果物から取り出したものでも、人為的に作り出された「合成香料」ということになるのです。
そういった厳密な区別を知らないでいると、単に「ヒノキの香り」「森の香り」を謳う防虫剤が、完全に安全な天然だと勘違いしてしまいます。
それらは「植物成分防虫剤」という名称で生協などでも販売されています。
「ヒノキ抽出の天然植物精油」と製品に記載されていても、じつは合成香料が入っているということになります。
また、半合成香料とは、例えば「すずらんの香り」の芳香成分リナロールなどのことで、天然素材を原料にして化学反応させて作られています。