化学物質と腸内細菌について | 化学物質過敏症 runのブログ

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・出典:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議


森千里氏(千葉大学大学院医学研究院教授/千葉大学予防医学センター長)
化学物質と腸内細菌について
腸内細菌叢の変動要因
ヒトや動物の腸内は、種類と数の両方で最も常在細菌が多い部位である。

この多様な細菌群は、消化管内部で生存競争を繰り広げ、互いに排除したり共生関係を築いたりしながら、一定のバランスが保たれた均衡状態にある生態系が作られる。

このようにして作られた生態系を腸内細菌叢(microbiota,microbiome)という。
ヒト腸内には、約600兆個ものいろいろな細菌が生存し、腸内細菌叢を構成している。

腸内細菌叢の変動は、遺伝的な要因よりも、生活習慣、とくに食事に大きく左右される。

腸内細菌叢の異常は、ヒトの健康に影響する。

腸内細菌叢の分類は、界・門・網・目・科・属・種の順により細かくなっていくが、化学物質の測定、遺伝子の発現、遺伝子の情報などについての技術がものすごいスピードで進化し、腸内細菌叢を解析する費用が劇的に下がっていることもあって、医学の分野では最低でも属のレベル、さらにもっと小さなレベルで対応する流れになっている。
 結腸上皮で生成された腸内細菌による産物は、上・下腸間膜静脈→門脈→肝臓→心臓→大動脈という経路で全身をめぐる。

腸内細菌叢の変動要因としては、遺伝要因(例:一卵性双生児の場合、二卵性双生児よりも腸内細菌叢組成が近い)、食事(例:乳児において母乳と混合乳とで細菌叢組成が異なる)、年齢(例:乳幼児と成人と老人で細菌叢組成が異なる)が挙げられる。
また、新生児・乳幼児における腸内細菌は、経腟(自然分娩)か帝王切開かによって異なる。

帝王切開での出産は、おおよそ日本20%、欧米30%、中国(上海)70%であるが、自然分娩と比較すると、生まれた子の腸内細菌叢はかなり異なる。

経腟の場合、母親から腸内細菌を受け継ぐという報告がある。
低出生体重と将来の生活習慣病
 出生時の体重が2500g 未満の低体重児が1980年頃から増加し、現在10%を超えている。

これは若い女性が痩せているのが美しいとして栄養を摂らないことによるところが大きい。

女性の必要なエネルギー量は1日当たり2000kcal 程度だが、平均摂取量は1600kcal 台になっている。

平均値でこれなので、もっと少ない人も多くいる。

低体重で生まれた子どもについて、出生時の体重が低いほど成人期の肥満のリスクが高まること、とくに男性の場合にその傾向が強いことがわかっている(図1)。


2005年のマウスの実験で、低栄養の母マウスから生まれた仔は、成獣になったときに肥満であり代謝異常が起きていることが確かめられた。

肥満のほかにも、アレルギー、脳神経発達障害などにも関係する。
胎内環境によって、遺伝子に変化があるのではなく、エピジェネティックな変化、すなわち遺伝子の発現に変化があることにより、長じて生活習慣病につながる。