・EVのリチウムイオン電池に使われる「コバルト」の安定供給は難しい!?
森林伐採と表土掘削 そのほか、EVの普及に大きな影響を受ける銅以外のレアメタルといえば、リチウムイン電池の正極材に使われる、コバルト、ニッケル、マンガンだろう。
コバルトについては、遍在性と希少性が高い。特にコンゴ民主共和国への遍在性が65%と異常に高く、近年「ラテライト型」と呼ばれる、採掘に伴う環境負荷が大きいニッケル鉱床の開発が増えている。
そのことにより、その副産物として採掘されるコバルトが多くなっていることが問題だ。
コバルトの地殻内の存在量は25ppmと、希少性が非常に高い。
年間生産量は十数万トンで、銅に比べると2桁少ない。
それにもかかわらず、2030年の世界の需要量はEVのリチウムイオン電池用だけでも約30万トンと予測され、安定供給は厳しいと考えられる(*5)。
リチウムイオン電池用コバルトの割合は、総需要量に対して2006年に20%、2016年で51%だったが、2020年には62%と予測されている(*6)
EV用リチウムイオン電池の急速な需要増によって、スマートフォン用電池に必要なコバルトがひっ迫することを恐れたアップル社が、2018年2月にコンゴ民主共和国で直接資源確保に動いたことで世界に衝撃を与え、価格が急騰したことは記憶に新しい。
機器別のコバルト使用量をみると、スマートフォン5~10g、タブレット30g、ラップトップ100gに対して、EVは10kg。桁違いに多い。
「2100年まで安泰」と言える地下資源はリチウムくらい!?
リチウム電池
リチウム電池には必要なコバルトの使用量は、ほかの電子機器と比べてEVが桁違いに多い
ニッケルについては、地殻存在量が75ppmに対して、生産量が約300万トン。
銅に比べると1桁少ない。
しかし「ラテライト型」とよばれる鉱床の採掘では、前述のように副産物のコバルトとともに大きな環境破壊が伴う。
ニッケルの主要な用途としてはステンレスがある。
2005年ごろ、中国のすさまじい資源囲い込みの動きから資源メジャーなどによるニッケル資源の激しい争奪戦が起きて、価格が高騰した。
そのほかにも、レアメタル、レアアースでは枯渇性、遍在性、そして地政学的問題などで供給不安があるものが多い。
しかしリチウムだけは、南米への遍在性はあるが2100年になっても供給不安はないだろう。
鉄鉱石の生産量については、2014年に20憶トンになり、その後年率3.3%伸びている。2020年には25億トンに達する見込みだ。
特に中国は、鉄鉱石生産量世界一だったが品位の低下から輸入を増やし、自給率は16%程度まで低下している。
ちなみに、世界の鉄鉱石品位平均(除く中国)は45%に対し、中国は27.5%とかなり低い(*7)。
金属の徹底したリサイクル、モビリティの変革など、「エコ」の手段は数多い
精錬工場 これからは、原材料となる金属の徹底したリサイクルによる資源生産性向上こそ最重要課題ではないか。リサイクル技術はすでにかなり進んでいる。
再生金属の製錬操業が安定してできるように官民が協力して、リサイクル原料の流通システムを確立することが必要だ。
都市部で眠っている金属の再利用、いわゆる“都市鉱山開発”を、重要な産業として確立することが急がれる。
リサイクルと同時に、希少資源の代替材料を開発することも重要だ。
日本としては資源生産性の飛躍的な向上によって、世界のトップランナーとなる戦略が望まれる。
そのためには「バージン金属資源消費税」(リサイクル率が高い企業ほど有利になり、企業価値が上がる)の導入といった税制改革を期待したい。
労働の対価としての所得については大幅減税し、企業の社会保障費負担を軽減させて税制中立にすれば、国際競争力を弱めることにはならないはずだ。
そのほか、都市化が進んだ街では自動車に頼らない交通手段を整備する(モビリティの変革)ことも必要だろう。
現在のEVは、その利用する周辺環境だけが「エコ」なだけであって、その生産過程では決して「エコ」ではないといえる。
その状況下で、相変わらず販売台数を世界で競うという各国・各企業の戦略はいかがなものだろうか。
ホリスティック(全体的)な視点のない、安易なものつくりはもはや許されない時代になっている。
<文/谷口正次>
資源・環境ジャーナリスト。NPO法人「ものづくり生命文明機構」副理事長、サステナビリティ日本フォーラム理事。
著書に『経済学が世界を殺す~「成長の限界」を忘れた倫理なき資本主義』(扶桑社新書)など
runより:エコカーって言うけど環境破壊が起こるし電磁波問題も大きい。
タクシーみたいにガスで動く車の方がマシに思えます。