・結果及び考察
1. 野菜の残留農薬
野菜33種143作物について調査した結果,16種48作物(34%)から殺虫剤23種類,殺菌剤17種類の合わせて40種類が痕跡~0.44 ppm検出された(Table 3,4).
せり科野菜のにんじん,根セロリ及びセロリからは,殺虫剤のシペルメトリンと抗菌剤のボスカリド,ピラクロストロビン,TPNの計4種類が痕跡~0.28 ppm検出された.
きく科野菜のトレビスからは,殺虫剤のイミダクロプリド,チアメトキサムの2種類が痕跡~0.01 ppm検出された.
あぶらな科野菜のブロッコリーや西洋わさびからは,殺虫剤のイミダクロプリド,クロルピリホスと抗菌剤のアゾキシストロビン,ボスカリド,ジフェノコナゾールの計5種類が痕跡~0.04 ppm検出された.
西洋わさびにはジフェノコナゾールの残留基準値9)が設定されていないため,0.04 ppm検出されたベルギー産西洋わさびは食品衛生法による一律基準値違反となった.
ジフェノコナゾールの一日摂取許容量(ADI)は0.0096mg/kg/dayであり10),体重50 kgの人であれば1日あたり0.48mg(0.0096 mg/kg/day×50kg・day)となる.
今回検出された0.04 ppm(0.04 mg/kg)から計算すると当該品12 kgに相当する.
厚生労働省による平成23年度国民健康・栄養調査報告において西洋わさびは「その他の単色野菜」に分類される.
「その他の単色野菜」の一日摂取量の平均値は46.3 gであり11),違反となった西洋わさびですべての単色野菜を摂ったと仮定すると,ジフェノコナゾールの摂取量は,ある特定の物質について生涯にわたり毎日摂取し続けてもヒトへの健康影響が出ないとされているADIに対して約260分の1のレベルであった.
うり科野菜のかぼちゃからは,殺虫剤のビフェントリン,ディエルドリン,フェンプロパトリン,イミダクロプリドと抗菌剤のミクロプタニル,トリフルミゾールの計6種類が痕跡~0.02 ppm検出された.
ゆり科野菜のにんにくの茎と長ねぎからは,抗菌剤のイプロジオン,プロクロラズの2種類が0.02~0.04 ppm検出された.
なす科野菜のパプリカにおいて,韓国産のパプリカからは,殺虫剤のアセタミプリド,ブプロフェジン,クロルピリホス,クロチアニジン,ジノテフラン,フェンバレレート,フロニカミド,イミダクロプリド,ピリダベン,ピリプロキシフェン,テブフェンピラド,チアメトキサムと抗菌剤のアゾキシストロビン,ボスカリド,クレソキシムメチル,テブコナゾールの計16種類が,痕跡~0.22 ppm検出された.
また,オランダ産パプリカからは殺虫剤のインドキサカルブが0.01~0.02 ppm検出され,ニュージーランド産のパプリカからは殺虫剤のフィプロニル,イミダクロプリド,ピリミホスメチルの計3種類が痕跡~0.01 ppm検出された.
その他の野菜において,くわいからは殺虫剤のクロルピリホスと殺菌剤ジフェノコナゾール,テブコナゾールの計3種類が痕跡~0.03 ppm検出された.
未成熟えんどうからは殺虫剤のアセタミプリド,クロルフェナピル,シペルメトリン,イミダクロプリドと殺菌剤ジフェノコナゾール,ヘキサコナゾール,プロクロラズ,プロシミドン,プロピコナゾール,ピリメタニルの計10種類が痕跡~0.12 ppmが検出された.
このうち,ジフェノコナゾールは基準値が設定されていないため,0.02 ppm検出された未成熟えんどうは食品衛生法による一律基準値違反となった.
ジフェノコナゾールのADIは0.0096 mg/kg/dayであり10),体重50 kgの人において当該品24 kgに相当する.
平成23年度国民健康・栄養調査報告において未成熟えんどうは「その他の緑黄色野菜」に分類される.
「その他の緑黄色野菜」の一日摂取量の平均値は35.5 gであり11),違反となった未成熟えんどうですべての緑黄色野菜を摂ったと仮定すると,ジフェノコナゾールの摂取量は,ある特定の物質について生涯にわたり毎日摂取し続けてもヒトへの健康影響が出ないとされているADIの約680分の1のレベルであった.
ジフェノコナゾールはトリアゾール系殺菌剤であり,糸状菌の細胞膜のエルゴステロール生合成阻害により殺菌効果を示し,国内では1993年に初回登録されている12).
過去の筆者らの調査において未成熟えんどうから高頻度に検出されていることから4,13,14),今後も継続して検査を行っていく予定である.
この他,えだまめからは殺虫剤のシペルメトリン,インドキサカルブの計2種類が0.02~0.44 ppm,オクラからは殺虫剤のイミダクロプリド,オメトエート,ペルメトリンと殺菌剤のアゾキシストロビン,キャプタン,TPNの計6種類が痕跡~0.32 ppm,ほうれんそうからは殺菌剤のイプロジオンが0.02 ppm,未成熟いんげんからは殺虫剤のイミダクロプリド,メソミルと殺菌剤のアゾキシストロビン,イプロジオン,ボスカリドの計5種類が0.02~0.50 ppm各々検出された.