・http://www.tokyo-eiken.go.jp/files/archive/issue/kenkyunenpo/nenpo64/otuka.pdf
輸入農産物中の残留農薬実態調査(野菜・その他)
- 平成24年度 -
大 塚 健 治 a ,牛山 慶 子 b ,田村 康 宏 a ,富澤 早 苗 a ,
八 巻 ゆみこ a ,岩越 景 子 a ,馬場 糸 子 a ,高野 伊知郎 a
平成24年4月から平成25年3月に東京都内に流通していた輸入農産物の野菜,きのこ,穀類及び豆類,45種167作物について残留実態調査を行った.
その結果,20種52作物(検出率31%)から殺虫剤(アセタミプリド,ビフェントリン,ブプロフェジン等)及び殺菌剤(アゾキシストロビン,ボスカリド,キャプタン等)合わせて41種類の農薬(有機リン系農薬3種類,有機塩素系農薬7種類,カルバメート系農薬2種類,ピレスロイド系農薬5種類,含窒素系及びその他の農薬24種類)が,痕跡(0.01 ppm未満)~0.48 ppm検出された.
このうちジフェノコナゾールが,西洋わさびから0.04 ppm,また,未成熟えんどうから0.02 ppm各々検出され,これらは一律基準値(0.01 ppm)を超えたため食品衛生法違反となった.
日常的な摂取量に換算すると,これらの残留量はジフェノコナゾールに設定された通常の喫食においてヒトの健康へ影響を及ぼすものではないとされる一日摂取許容量(ADI)の,それぞれ1/260と1/680程度であった.
キーワード:残留農薬,輸入農産物,野菜,きのこ,穀類,豆類,殺虫剤,殺菌剤,残留基準値,一律基準値
はじめに
内閣府の食品安全委員会が平成24年7月に実施した食品に関するアンケート調査結果において,食品安全に不安を感じるとする回答割合は64.8%で,平成21年度調査以降最も低い結果となったものの交通事故や犯罪に対する不安よりも高いことが報告された1).
東京都では食の安全・安心の確保を重点課題として取り上げ,着実に遂行するために様々な施策を行っている2,3).
その上で市場に流通する輸入野菜等の残留農薬実態を把握することが重要なテーマとなっている.
著者らは,都内市場に流通する輸入農産物中の残留農薬実態調査を昭和57年度より継続的に行っている4,5).本稿では,平成24年度に実施した輸入農産物のうち,野菜,きのこ類,穀類及び豆類の調査結果について報告する.
実験方法
1. 試料
平成24年4月から平成25年3月に都内に流通していた輸入農産物の野菜,きのこ,穀類及び豆類,45種167作物について調査した(Table 1).
2. 調査対象農薬
有機リン系,有機塩素系,カルバメート系,ピレスロイド系,含窒素系,その他の農薬及びこれらの代謝物,計289種類(異性体を含む)について調査した(Table 2).
3. 装置
1) ガスクロマトグラフ
(株)島津製作所製GC-2010(検出器:FTD,FPD,ECD)及びGC-17A(検出器:ECD).Agilent社製5890II(検出器:NPD)及び6890(検出器:ECD).
2) ガスクロマトグラフ-質量分析計
Agilent社製6890N/5973 inert及び7890A/5975C.Waters社
製Quattro microTM GC.
3) 高速液体クロマトグラフ
(株)島津製作所製 LC-10AT(検出器:蛍光,UV)
4) 液体クロマトグラフ-質量分析計
Waters社製Quattro Premier XE System及びXevo QTof MSSystem.AB SCIEX社製4000Q TRAP.
4. 分析方法
厚生労働省通知試験法6),田村らのGC及びGC/MSによる食品中残留農薬の系統別分析法7),小林らの試験法8)等を用いた.
なお,定量限界は0.01 ppmで,定量限界未満で農薬の存在を確認できたものを痕跡とした.