・4 接着剤
調査方法 (表5:調査した水性形接着剤の概要)
1. 水性形接着剤から、塗布後24時間中に放散する化学物質の測定
市販の水性形接着剤6種について、接着剤1gをガラス板に塗布(33cm2)し、テドラーバック(10L)内に設置。
その後、テドラーバック内に清浄空気(湿度50%)を封入し、25±1℃で24時間静置後、テドラーバック内の空気を採取した。測定対象は炭素数C3〜C16のVOC類及びホルムアルデヒド〜ヘキサアルデヒドまでのアルデヒド類(13物質)とした。
2. 室内汚染濃度の予測
得られたチャンバー内化学物質濃度より、初期放散速度及び一次減衰定数を算出。
これらパラメータを用い、小学校教室内で児童らが工作に酢酸ビニル系接着剤(PVAcA)を使用した場合の室内空気中濃度を予測した。
予測時に想定した教室内環境等の条件を以下に示した。
教室内汚染濃度予測時の室内環境条件及び塗布面積等
児童数40人、授業時間90分、教室容積192m3、換気回数2.2回、気温25℃、湿度50%。
接着剤PVAcAを、授業開始時に一斉に塗布300cm2。
調査結果 (表6:24時間中に放散する主な物質と放散量(mg/g)、図7:教室内空気中物質濃度変化の予測)
1. PVAcA及びPVAcB:PVAcA(可塑剤無し)の方がPVAcB(可塑剤を含む旧タイプの)に比べ、放散する物質の種類及び量が多い事が分かった。
EVA:アセトアルデヒドの放散量が6製品中最大だった。
PAr及びPar-co:1-ブタノール、2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール、アルカン類等、共通した物質が検出された。
PIC:VOCはほとんど検出されなかったが、ホルムアルデヒドの放散量は6製品中で最大であった。
2. 調査当時(2004年8月)一般的に普及しており、学校教材として汎用されていた酢酸ビニル系接着剤(PVAcA)を使用した場合の教室内物質濃度変化を予測した。
その結果、アルデヒド類濃度の最大増加値については、ホルムアルデヒドが1.2μg/m3、アセトアルデヒドが0.9μg/m3と、比較的小さいと予測された。しかしVOC類については、検出された6物質の最大値合計が670μg/m3と算出され、厚生労働省のTVOC目標値(400μg/m3)を超えると予測された。
※「水性形接着剤から放散される化学物質による室内汚染濃度の予測」より(齋藤育江他:室内環境学会誌 8(1),15-26,2005)