5:2013:畜水産食品中の残留有機塩素系農薬 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・5. 汚染稲わらを給与された牛に関する違反事例
2011年8月,厚生労働省の通知23)で農薬(BHC,DDT)を含有する古畳再製稲わらを給与された牛が東京都に出荷されていたことが農林水産省から情報が入り,当該畜産物の流通状況の確認,農薬残留検査を実施し,食品衛生法に違反する場合は,当該製品が流通することがないよう,対応依頼があった.

都内でと殺された牛は27頭であったが,すでに他の自治体等にも流通していたため,都での牛肉等の検査は13頭について実施した.

農薬の残留濃度については情報が無いため,ルーチン分析法でスクリーニングを行い,検出した場合に通知法のGC/MSによる農薬等の一斉試験法(畜水産物)で定量分析を実施した.

試料は1頭の牛について筋肉と脂肪部位に分けて採取したため,検体数は筋肉13検体,脂肪13検体となった.

検出された農薬はDDTとBHCであった.DDTについて,筋肉からは定量限界(0.01 ppm)未満で,脂肪からは13検体中5検体より0.02~0.04 ppmの範囲で検出されたが,いずれも残留基準(5ppm)以下であった.

BHCについては,異性体の検出状況により基準値に留意点がある.γ-BHCのみが検出された場合は,γ-BHCの残留基準(牛筋肉:0.02 ppm,牛脂肪:3ppm)が適用されるが,γ-体の検出の有無にかかわらずα-,β-,δ-BHCが検出された場合は,BHC(各異性体の総和)の規格基準を適用する.

牛筋肉,牛脂肪については残留基準がないため一律基準の0.01 ppmが適用される.

今回の検体からはいずれもβ-BHC(α-体検出例有)が検出された.
筋肉13検体中6検体からBHCが0.01~0.03 ppm,脂肪からは全検体から0.01~0.08 ppm検出された.そのため0.02 ppm以上の検体が違反となり13頭中11頭の牛が対象となった.
同じ個体で筋肉が基準以下,脂肪が基準を超えた場合には個体として不可分の状態であり,個体としての法違反の取扱いとなることで対応した.

この事例では,飼料の汚染情報があったため違反を検出することが出来たと考えると,食肉だけでなく養殖魚介類などの飼料管理も重要であることが示唆された.
 

おわりに
有機塩素系農薬はDDT,BHCに代表されるように,殺虫剤として広く大量に使われ,農業や防疫の面で人類への貢献は計り知れないものがある.

しかし,その残留性,蓄積性が環境から生物へ移行し最後に人への危害を及ぼすことが判明し,国際的に規制された.

マラリア対策など一部の国を除いてこれらの農薬は使用禁止とされ,環境や生態系への汚染も減退し長年経過している.

本稿の日常分析では畜産食品は定量限界を超えての残留はこの数年認められなかったが,2011年の汚染稲わらに由来する牛の違反事例は,畜水産食品の飼育や養殖の情報収集や日常分析などの継続的な監視が重要であることを示している.