・出典:ケミカルデイズ
http://www16.plala.or.jp/chemicaldays/index.html
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・墨汁 腐りやすいのでいろいろ入っている
書道の時間には墨汁を使いますね。書道では本来、松などの木や植物油を燃やしたスス(煤)をニカワ(膠)で固めた固形墨を、硯(すずり)ですって、水に溶かしたものを使いました。
その手間を省いたものが、最初から液体になっている墨汁です。
墨汁の成分も、同じようにススとニカワ、そして水からできています。
ススの替わりに工業的に作られた炭素を、ニカワの替わりに合成樹脂で作られた接着剤を使ったものも出回っています。
墨汁は、炭素が水の中に細かい粒子となって分散している「コロイド」という状態になっています。
炭素だけではすぐに水と分離してしまうため、炭素の周りを水によく混ざるニカワや合成樹脂で覆うことで、コロイド状態を保っています。
墨汁の重要な成分としては、スス、ニカワ、水の他に、防腐剤が入っています。
ニカワは動物性タンパク質なので、それが水に溶けている状態はひじょうに腐敗しやすいのです。
それを防ぐために入っているのが防腐剤で、腐敗菌を殺す役割を果たします。
それでも墨汁は長持ちしません。よく庭木の枝を切った切り口に墨を塗ると腐るのを防ぐと言いますが、それはこの防腐剤の働きによるものです。
墨汁の成分表示
水、カーボン、合成樹脂、防腐剤、不凍液、香料
単に墨の水溶液と思われる墨汁には、ほかにも分離を防ぐ安定剤、滲み具合を調整する浸透剤、ニカワのもつ動物特有の臭気を消すための香料、凍結防止剤、消泡剤等々、多様な成分が含まれていることは驚きです。
化学物質過敏症の人が墨汁によく反応して症状が出るということもうなずけます。
墨汁はこうした化学物質を多用しているので、その作品は、固形の墨をすって使った作品より、劣化が早いと言われています。