カフェのコーヒーフレッシュ
「普通のミルクや生クリームをコーヒーに入れると、ほわっと上がってくるでしょう。あの上がり方を再現するのが難しかったなあ。1年かかったよ。でも簡単に元は取れた。原価が安いし、外食系企業がぼんぼん買ってくれたからね」
コーヒーフレッシュの正体は 添加物だらけの “ミルク風味の油” だった。
「ミルクがなぜ常温で置きっ放しでも腐らないのか、ちょっと考えたらおかしいと思うはずだけどね」 と安部さん。
おかしいと思わない消費者の感覚こそが、おかしいのかもしれない。
ミルクの香りは、人工的な香料の組み合わせで簡単に作れる。
3,000以上あるケミカルな香料の配合によってどんな香りや匂いも作れると言う。再現できない匂いは無いそうだ。
バラの香りから排泄物の匂いまで、本物と区別できないほどの水準で作れるそうだ。ミルクの香りなど朝飯前である。
このように、裏側を知るとギョッとするような 「原材料」 はまだまだある。
たとえば、合成着色料は石油。
「タール系色素」 とも呼ばれる。少量でムラなく色が出るのが利点だ。
現在、日本で食品添加物として認可されている合成着色料は12種類(赤色2号、赤色3号、赤色40号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号、青色2号)。
イギリスの食品基準庁では、合成着色料を摂取した子どもに多動性行動が見られたという研究報告を受けて、「子どもの活動や注意力に悪影響を与える可能性があります」 という表示を義務化した。
義務化されたうちの 赤色40号、赤色102号、黄色4号、黄色5号 は、日本で使われている。
国によって取り扱いが異なるから不安である。
「きれいな色」 だけでなく、「自然な色」 に見せるためにも、わざわざ着色料が使われる。前述のカラメル色素だ。
「赤っぽい茶色から真っ黒まで、いろんなカラメル色があり、私も売り歩いていた。日本の着色料の80%はカラメル色素。
コーヒーフレッシュにもこのカラメル色素が使われている。
真っ白だと不自然に見えるので、カラメル色素を少し入れて 「褐色の恋人」 にするのである。
醤油やみその文化だから、茶色系は自然な色に見えて安心するのです。
ただし、カラメル色素には製法によって4種類あり、発がん性が疑われるものもある。なぜメーカーはその製法で作るのか。
「昔ながらの砂糖を煮詰める方法ではカラメル色が安定しないからです。特にクエン酸が入った酸味の中だと色があせていく。数年経っても色が変わらないように化学処理をする」
消費者は、そうまでして 「きれいな色」 や 「自然な色」 のドリンクを飲みたいわけではなく、安全性が何より重要なはずだ。
しかし、その判断をするためにも、メーカーの情報開示と、消費者の知る意欲が不可欠である。
B郞はブラックコーヒーを飲みながら、自分に言い聞かせた。
「国が認可しているし、大企業が売っているんだから安全だよなあ」