2:明らかになってきたネオニコチノイド系農薬のヒトや哺乳類への毒性 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・日本の子どものネオニコ曝露状況
2016年の名古屋大のグループの論 文*4では、日本の子ども(3歳児、223名)の尿中から有機リン系、ピレスロイド系殺虫剤の代謝物が100%、ネオニコ系が約80%検出された。

検出されたのはチアクロプリド以外の6種のネオニコで、それぞれの検出率、最高値の値は、ジノテフラン58%、308nM、アセタミプリド12%、9nM、イミダクロプリド15%、10nM、 チアメトキサム25%、13nM、クロチアニジン8%、35nM、ニテンピラム21%、4nM であった(モル濃度はデータより換算)。

またジノテフランやネオニコ総量の曝露が高い子どもでは、有機リン系の曝露が高い傾向が見られた。
さらに2018年の環境化学会で発表された北海道大のグループの報告*5では、国内幼児46名のうち多くの幼児の尿中から、2種以上複数のネオニコが検出された。

また、アセタミプリドの代謝物の一種では、検出率が83%以上、濃度は最高値で84nM(データより換算)と原体よりも高かった。

以上、日本の子ども達がネオニコや有機リン系農薬に日常的に複合慢性曝露している実態がわかってきた。
低用量ネオニコによるヒトへの環境ホルモン作用

これまでの動物実験で、ネオニコが卵巣や精巣などの生殖器官に悪影響を及ぼすことが複数報告され、ネオニコが内分泌攪乱(環境ホルモン)作用をもつことが示唆されていた。

2017-8年、カナダ・ケベック大のグループは、ヒト胎盤培養系やヒト乳がん由来細胞を用いて、低用量のネオニコが内分泌攪乱作用を示すことを報告した*6・*7。
ヒト胎盤培養系では、ネオニコ系チアクロプリド、チアメトキサム、イミダクロプリドを100nM ~10μM添加して24時間培養すると、女性ホルモン2種・エストラジオール、エストロンの濃度が上昇し、女性ホルモン・エストリオールの濃度が減少した。

なかでもエストリオール濃度の減少は、100nMとごく低用量のネオニコ曝露で確認された。

ヒト乳がん由来細胞では、チアクロプリド、イミダクロプリドを添加して24時間培養し、女性ホルモン産生に必須の酵素・アロマターゼの濃度を調べた。

チアクロプリドは100、300nM、10μM でアロマターゼの産生が増強された。

イミダクロプリドは100nM でアロマターゼの産生を増強し、さらに環境ホルモン作用で報告されている逆 U 字型の影響が見られた。
これらの報告で注意を引くのは、低用量のネオニコで環境ホルモン作用が確認されていることだ。

上述したように、国内の子どもの尿で検出されるネオニコは最高値で数 nM ~数百 nM、国内の成人女性の尿でも数十 nM のネオニコが検出されている*8。

ネオニコは子どもの発達期に、脳や生殖器で重要な女性ホルモンを攪乱し、成人女性の乳がん発症に関与している可能性がある。
さらに2018年、東北大のグループは、ラットの副腎髄質の細胞培養系にイミダクロプリドを1-2日間曝露したところ、3μM 以上でアドレナリン産生を攪乱することを報告しており*9、ネオニコが内分泌系に影響を及ぼすことは明らかだ。

 

哺乳類ニコチン性アセチルコリン受容体α7型の重要な機能を攪乱するネオニコ
ニコチン性アセチルコリン受容体(以下ニコチン性受容体)は、サブグループが多く、ヒト・哺乳類でも多様な種類がある。

ネオニコ類はその中でも、脳で重要なヒト・ニコチン性受容体α4β2型に作用することが2011年に報告された*10。

2017年、フランス・オルレアン大の論文*11では、ネオニコによるラット・ニコチン性受容体α7型に対する攪乱作用が報告された。

ヒト・哺乳類ニコチン性受容体α7は、脳神経系で重要であるだけでなく、免疫系、生殖系など多くの臓器で多様な機能を担っている重要なサブグループである。
ラット・ニコチン性受容体α7を発現させた培養系に、ネオニコ系チアクロプリド、アセタミプリド、チアメトキサムを投与したところ、チアクロプリド、アセタミプリドは数百μM 濃度で興奮反応を起こした。

また、実験系に予めネオニコを入れてから、アセチルコリンを投与して影響を調べた。その結果、アセチルコリンのニコチン性受容体α7に対する興奮反応を、チアクロプリド、アセタミプリドは10μM 以上で増強し、チアメトキサムは1μM 以上で抑制した。
 α7型は種間を越えて相同性が高く、特にアセチルコリン結合領域の類似性が高い。

従ってネオニコは、ヒト・哺乳類ニコチン性受容体α7の多様で重要な機能を阻害・攪乱している可能性がある。

2017年の報告*12で、極めて低用量のイミダクロプリドを高カロリー食とともにマウスに長期投与すると、肥満度を高め、インシュリン抵抗性を高率に起こしたが、これは肥満細胞で機能しているニコチン性受容体α7が関わっているかもしれない。
 以上、最近の研究から、ネオニコ系殺虫剤がヒト・哺乳類に悪影響を及ぼしている可能性がより明らかになっており、日本におけるネオニコの多量使用は至急規制すべきと考える。