(4)原告の本件検査分析業務における具体的な作業内容・作業環境
ア ガスクロ検査業務
(ア)作業内容(甲41,乙56,原告本人,弁論の全趣旨)
原告は,平成5年9月から平成IO年9月まで及び平成12年9月から平成13年6月までの期間,主に本件工場研究本棟の1 0 7号室において,ガスクロ検査業務に従事した。
ガスクロ検査業務では,試料の前処理や機材の共洗い等のために,ノルマルヘキサン,クロロホルム,メタノール,イソブチルアルコール等の有機溶剤ないし化学物質を使用した。
ガスクロ検査業務のうち,脂肪酸のアルキル組成のためのメチルエステル化作業(以下「メチルエステル化作業」という。)の具体的手順は,以下のとおりであった。
① 50m1スクリュウ管にメタノール2 0ml を採取する。
② 試料1gを採取し,①のメタノールに加熱溶解させる。
③ ②の溶液1mlをピペットマンでメチルエステル化用の蓋付きの試験官にとる。
④ 三フッ化ホウ素-メタノール溶液1m1をピペットマンで添加する。
⑤ 試験管の蓋をきつく閉め,80℃ホットバスで10分間加温する。
⑥ 室温まで冷却する。
⑦ ノルマルヘキサン2mlを添加する。
⑧ 塩化ナトリウム溶液4mlを添加する。
⑨ 試験管の蓋をきつく閉め,1分間激しく振る。
⑩ 1分開静置後,水屑(赤色)をピペットで抜く。
⑨ 試験管の中に残るノルマルヘキサン屑2μ1をマイクロシリンジという器具を用いて,ガスクロ装置に注入する。
原告は,これらガスクロ検査業務を,一日当たり十数個から数十個の検体について実施した。
くイ)作業環境(甲5の1~4,甲6,41,原告本人,弁論の全趣旨)
1 0 7号室は,広さが約48・(6mx8m)であり,高さが約4メートルの長方形の部屋であり,出入口が南西側に2か所あった。
107号室の北側壁面には,屋外に通じる窓が4枚あり,その合計面積は6,2・であった。
1 0 7号室には,ドラフト等の局所排気装置等は設置されていなかった。
原告は,被告から割り当てられた自らの実験台の上で,ガスクロ検査の前処理作業等を行った。被告からは「キーメイトマスク」という簡易防臭用マスクが支給されたが,有機ガス用防毒マスクが支給されたことはなかった。
イ アニオン界面活性剤含羞測定業務
(ア)作業内容(甲41,原告本人,弁論の全趣旨)
原告は,平成6年3月頃から平成13年6月頃までの期間,主に本件工場研究本棟の110号室において,アニオン界面活性剤含量測定業務を行った。同業務の具体的手順は,以下のとおりであった。
① 分液漏斗(A)に水5 0m!,アルカリ性四ホウ酸ナトリウム溶液10ml及びメチレンブルー溶液(0.2 5 g/I)5mlを入れる。分岐漏斗(B)に水1 0 0ml,アルカリ性四ホウ酸ナトリウム溶液10ml及びメチレンブルー溶液(0.・ 2 5 g/1)5mlを入れる。
② それぞれにクロロ,ホルム10mlを加え,約30秒間激しく振り混ぜた後,放置しでクロロホルム層を捨てる。この操作を更に1回繰り返す。
③ それぞれの水層にクロロホルム2~3mlを加え,緩やかに振り混ぜた後,放置し,分離したクロロホルム層を捨てる。この操作をクロロホルム層が無色になるまで繰り返して水屑中の着色物を除去する。
④ クロロホルムで洗い終わった分液漏斗(B)中の水屑に,硫酸(1十35)3mlを加える。
なお,分液漏斗(A)及び分液漏斗(B)の脚部が濡れている・ときには,ろ紙などでふき取る。
⑤ 上記の準備操作を行った分液漏斗(A)中の水層に,試料の適量を加える。
⑥ クロロホルム10m1を加えて,緩やかに約1分間振り混ぜて放置し,クロロホルム屑を分岐漏斗(B)に移し入れる。
⑦ 分液漏斗(B)を緩やかに約1分間振り混ぜた後,放置する。分液漏斗の脚部に脱脂綿を詰め,クロロホルム屑を全量フラスコ25mlに移し入れる。
⑧ 再び分液漏斗(A)にクロロホルム10mlを加えて,⑥及び⑦の操作を繰り返して抽出を行い,クロロホルム層を⑦と同様に先の全量フラスコ2 5mlに合わせ,クロロホルムを標繰まで加える。
原告は,アニオン界面活性剤音量測定業務を,定期測定として週1,2回行い,併せて,臨時測定として1日に10個以上測定したり,毎日数個の検体を数週間から2か月程測定したりした。
(イ)作業環境(甲6,7の5~8,甲41,原告本人,弁論の全趣旨)110号室は,1 0 7号室の西側に隣接する長方形の部屋であり,出入り口は3か所あった。
110号室の北側壁面には,屋外に通じる窓が10枚あった。
110号室には,ドラフトが2機設置されていたが,原告は,ドラフトを使用せずにアニオン界面活性剤含量測定業務を行った。