2:快適な室内環境-シックハウス症候群を中心に- | 化学物質過敏症 runのブログ

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パソコン教室は

①完成してからの年月が、他の教室と比較して浅いことが多い

②机や椅子などが新規購入である場合が多い

③窓を開閉せずに空調機を使用している

④パソコン機器から発生する化学物質もある 

等の理由によって高濃度のVOCsが検出される場合がある。
図3はある専門学校での測定結果である。

体育館のエチルベンゼン、キシレン濃度が高いのは床に使用されたワックスの影響が考えられる。

また、この例ではスチレン濃度がどの教室も10μg/m3程度と一定して比較的高濃度であったのが特徴的であった。

これは同時に測定した外気濃度の結果から、外気からの流入によるものと考えられる。

このように室内空気の測定では外気濃度の把握も重要である。
 

#.今後の課題
1.室内濃度指針とシックハウス症候群との関係
それでは、シックハウス症候群の問題は解決したといえるだろうか。

まずは、厚生労働省の定めた指針値はシックハウス症候群を引き起こす閾値を意味する値ではないということを認識する必要がある。

室内環境での濃度が指針値を超えたからといって、直ちに居住者がシックハウス症候群と診断されることは誤りである。

居住者の健康には温熱環境因子、生物因子、照度・騒音等の物理的環境因子、精神的ストレスなどが発症に寄与することから、化学物質が原因であると判断するためには、十分な臨床判断に基づく総合的な診断が必要である[4]。
室内空気の測定には2つの観点がある。

ひとつは建築物の性能評価としての測定であり、これには使用建材や換気設備についてシックハウス対策がなされていれば指針値以下の値となって施主に引き渡される際の品質保障となるものである。

もうひとつは居住者・使用者の健康影響を調べるための測定である。

上述のように指針値とシックハウス症候群の発症との関係は必ずしも一致するものではなく、「指針値以下ですから、あなたはシックハウス症候群ではありませんよ」、という説明はナンセンスである。

あくまで発症の背景としてのひとつの要因として取り扱うことが望ましい。
 

2.シックハウス症候群と化学物質過敏症
次に、本態性多種化学物質過敏状態(いわゆる化学物質過敏症)の問題がある。

化学物質過敏症では微量な物質への暴露および、関連性のない多種類の化学物質に反応を示すことが知られており[2, 5]、指針値より低濃度であっても、また、指針値の定められていない物質であっても、患者に影響を与える可能性がある[6]。
採取した室内空気をGC/MS-SCAN法で分析すると、対象物質以外の物質が高濃度で検出される例が多々ある。
表3に指針値対象項目以外で100μg/m3以上検出されたVOCsを挙げた。木質建材由来と思われるα-ピネン等のテルペン類以外にもヘキサン等の炭化水素類、トリメチルベンゼン類など多岐に渡っている。

また、同定できなかった未知物質(脂肪族炭化水素類)が高濃度で検出される例もあった。

厚生労働省指針値ではTVOC(総揮発性有機化合物)の暫定指針値が400μg/m3と定められており、個別に規制されている以外の物質についても注意が必要である。


3.地方衛生研究所として
このような化学物質過敏症患者以外にも、化学物質により感受性の高い人々(小児、妊婦、高齢者等)のリスク評価が必要と考えられる。

この場合、極めて低濃度での汚染が問題となり、個人差も非常に大きいことから、定量的なリスク評価というのは困難であるとされている。

これには室内濃度指針値にとらわれずに測定対象化学物質範囲を広げ、高精度な微量分析を行う必要がある。

また、室内濃度指針では人が呼吸する高さを目安として、床上高さ150cmの室内中心部で測定することになっているが、家族構成や住まい方によっては床面近くでの測定や壁際での測定のほうが適切な場合もあるだろう。

そして次のステップとしてその測定結果をもとに対策を講じなくてはならない。
「地域保健法」[7]では地域保健体系の下で、市町村、都道府県、国等の果たす具体的役割として「住宅や建築物における室内空気汚染等による健康影響、いわゆるシックハウス症候群について、知識の普及、啓発を行うとともに、地域住民からの相談等に応じ、必要な指導等を行うこと」と述べられている。

室内空気問題に関する情報の収集・開示・発信によって市民のみなさんによりよい室内環境を提案できれば幸いである。