家庭用化学物質への重度過敏症でIT 技術者がクリスマス休暇中ホームレスに | 化学物質過敏症 runのブログ

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・出典:化学物質問題市民研究会
カナダ 放送協会(CBC)ニュース 2018年12月21日
家庭用化学物質への重度過敏症でIT 技術者がクリスマス休暇中ホームレスに
化学物質過敏症でオリバー・チャンは
3年間に 70回、家を離れなくてはならなかった

情報源:CBC News, Dec 21, 2018
Severe sensitivity to household chemicals leaves 
GTA man homeless for the holidays
Environmental sensitivities have forced Oliver Zhang to move 70 times in 3 years
By Michael Smee, CBC News
https://www.cbc.ca/news/canada/toronto/
oliver-zhang-homeless-for-the-holidays-1.4955383

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2018年12月28日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/sick_school/cs_kaigai/Canada/CBC_181221_
Severe_sensitivity_to_household_chemicals_leaves_GTA_man_homeless_for_the_holidays.html
 

オリバー・チャンはある公園で CBC トロントに話をした。彼はとても多くの香料に非常に過敏なので、屋内環境への広範な曝露はひどい体調不良をもたらす。 (Richard Agecoutay/CBC)  

オリバー・チャンにはクリスマスにひとつの望みがある。

実際に住むことができる家がほしい。
 この 40代後半の IT 技術者はひどい環境過敏症(environmental sensitivities)のために、過去 3年間に 70回、家を離れなくてはならなかった。
 ”過敏症を引き起こす原因物質が現れると、私は再び家を離れなくてはならない”と彼は CBC トロントに述べた。”生活が完全に破壊されている”。
 彼に症状を引き起こす原因物質は、一般的な屋内用化学物質と我々の多くにとっては当たり前であるカーペット脱臭剤、空気洗浄装置、そして塗料などである。

 暴露すると 2 時間以内に彼は、胃の痛みから胸苦しさ、そして骨盤下部の不快感まで、耐えられない苦痛鵜に襲われ、その場を離れなくてはならない。

病院の中にいてもつらい。
 健康的な生活を送ることのできる家を必死に探した結果、チャンは、滞在すべき場所として地域社会のサービスに頼ることを思いついた。

彼はトロントの中間地区に、彼の症状を引き起こすことのない精神科危機避難所(シェルター)を何とか見つけ出した。

 今月の初め、彼はその施設で管理者と面談したが、管理者は彼が暫定的にそこで寝泊まりすることに嫌々ながら同意した。

しかし緊急にベッドを必要とする人がいる場合には、空けなくてはならない。
 その日が来たら、チャンには選択肢はなく、また街頭で暮らさなくてはならい。

 有害化学物質のない適切な家を求める彼の実りのない苦労は、彼の物腰にはっきり見える。彼はびくびく話し、気もそぞろである。
 ”私はほとんど生活を楽しむことができない”と彼は言う。

”私は、私の子どもの面倒をよく見てくれる私の母親と楽しく時を過ごすことができなかった。

私は過去3年間、息子を屋内水泳プールに連れて行ったり、彼の屋内でのピアノ演奏を見に行ったりすることができなかった”。

 チャンの障害は、医学界では多種化学物質過敏症/環境過敏症(MCS/ES)として知られている。
 トロントのウイメンズ・カレッジ病院の環境健康クリニックはその障害を持つ人々の治療に特化している。

しかし、1年弱の間、チャンを診ているリン・マーシャル博士によれば、これらの治療は限定されている。
 ”患者はもちろん非常にイライラするが、私も医師として非常にイライラした”と、彼女は述べた。

”彼は息子を連れてどこにも行けないので目に涙をためていたが、私はそれを助けることができない”。

 それでは、あなたは MCS/ES の人々をどのように治療するのですか?
 ”彼の症状を真に引き起こすものをどのように回避するかを彼に教える”と彼女は言う。

それが回復に向けての第一歩だからである。

しかしそれは長い道である。

”私はどのくらいの期間がかかるのか、誰にも言えない”。

 一方マーシャルは問題は大きくなってきているように見えると言う。
 彼女はウイメンズ・カレッジ病院クリニックで限られた時間しか働くことができないのに、近年、彼女の仕事量は増大している。
 ”我々の患者待機リストは1年を超えている”と彼女は言う。

私はそれが嫌であるが、それが現実である。多くの人々が支援を求めており、診断を求めている”。

 マーシャルは、連邦統計が 2010年には MCS と診断された人々がカナダ全体で 800,500人で、それは 2005年から 13.5%の上昇であることを示していることを指摘している。
 オンタリオ州だけでも 2010年には医療専門家により MCS であると診断された人々は 292,700 人いると彼女は言う。
 オンタリオ州の医療/長期介護大臣は 2016年に環境健康に関するタスクフォースを立ち上げた。

その仕事は MCS/ES の人々を治療する新しい方法を見つけることである。

2019年に期待される成果

 大臣は CBC トロントと会うことはないであろうが、eメールで表明するであろうと、大臣の報道担当官デービッド・ジェンセンは述べた。
 ”現在実施中のタスクホースの第 2 段階は、多種化学物質過敏症/環境過敏症の研究と専門家及び公衆の教育はもとより、それらの症状を持つ人々を介護するシステムのための勧告を開発することからなっている。

政府は、2019年中に報告書を受け取ることを期待している”。

 その症状を持つ人々が180,000 人以上いるケベック州では、被害者らは州政府からの支援を待っていられない。
 ケベック環境健康協会(EHAQ)は、特に MCS/ES の人々のために、モントリオール州北部のローレンシャン山地に居住地建設の真っ最中である。
 それはエコアシス(Ecoasis)と呼ばれ、4つの区画を含んでおり、それぞれの区画は 10棟の手頃な価格の家屋を含むことになる。ケベック環境健康協会(EHAQ)の創設者ロヒニ・ペリによれば、将来的には 40家族がそこに住む予定である。
 それは、住宅団地用として同協会に寄付された大きな土地区画の一部である。

訪問者は立ち入り前に検査される

 各棟は、MCS/ES 患者らに影響を及ぼす一般的な原因物質をほとんど含まないよう特別に設計されるであろう。
 訪問者らは、香水やタバコの煙のような最も広く行きわたっている原因物質により団地が汚染されないことを確実にするために、立ち入り前にチェックされる。

 ペリは 20年以上、MCS/ES に罹っている。
 彼女とその家族が彼女の居住環境から多くの化学物質やその他のストレス要因を注意深く除去した後の 2016年に、彼女の症状は和らいだ。

 ”私は、今はもうその症状は出ないけれど、最大の心配ごとは、商店街の中に入っていくことができるのかどうかわからないことである。

どのような化学物質がそこに存在するのかわからない”とペレは述べた。
 ”かつて一度そのようなことが私の身に起きた。もしやれば、きっと再び起きるであろう”。

 チャンは回復の見込みがありそうだと、マーシャルは言う。
 しかしそれまで、そして彼の以前の仕事からの”障害給付金”で暮らせる間、彼の家探しは続く。
 彼は、精神科危機避難所にいられるのはもうすぐ終わりになるかも知れないこと、そして次の滞在先がどこになるのかについて懸念している。
 ”冬が来ている”とチャンは言った。