ジイソシアネートの健康への影響:医療従事者のためのガイダンス | 化学物質過敏症 runのブログ

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出典:NPO法人 VOC研究会
http://www.npovoc.org/shiryo03/healtheffects.pdf

これはアメリカ化学工業協会(American Chemistry Council) のポリウレタン工業会(Center for the Polyurethanse Industry)が中心となって作成された“Health Effects ofDiisocyanates: Guidance for Medical Personnel”を翻訳したものです。

英語の原文はAmerican Chemistry Council のホームページから入手できます。
Health Effects of Diisocyanates:
 Guidance for Medical Personnel

 

ジイソシアネートの健康への影響:医療従事者のためのガイダンス
まえがき
この指針書は、特に医療関係者のために、ジイソシアナート曝露による潜在的な健康への影響に関する最近の情報を提供し、かつその医学的診断と管理を支援するために作成された。
ここでは、広く用いられている2つのジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)とトルエンジイソシアネートの最近の科学知識および経験を反映しているが、課題の全てにわたって詳細には論ずるつもりはなく概要についてである。
医療関係者および保健専門家は、メーカーや供給者の作製した製品安全書(例えば、物質安全性データシート(SDSs)と同様に最近の科学文献を調べることにより、この分野での最近の進展状況を把握することができる。
(1)ジイソシアネートは2つのイソシアネート基(-NCO)を持つ有機化合物である。ジイソシアネートはフォーム、エラストマー、塗料、接着剤やポリウレタン系高分子材料の製造過程で一番多く使われる。
(2)MDI は大部分は2,4-TDI と2,6-TDI のイソマー比が80:20の混合物から作られる
(CAS# 26471-62-5)
(3)MDI はメチレンジフェニルジイソシアネートモノマーの省略名である。(CAS#101-68-6)
MDI 重合体は一般的には30-70%のジフェニルメタン・ジイソシアナートモノマーを高分子量留分(CAS # 5873-54-1)でバランスさせたもので、MDI の重合体を一般的に MDIと呼んでいる。
(4) TDI と MDI の取り扱いに関するさらに詳しい情報については、米国化学工業協会のポリウレタン産業センターの次の公報を見るのがよい。:
www.polyurethane.org.や MDI および MDI 重合体の作業ガイダンスには(AX-205)。

TDIの作業ガイダンス(AX-202)を参照。
POTENTIAL HEALTH HAZARDS
潜在的な健康被害
RESPIRATORY EFFECTS
呼吸器系への影響
MDIとTDIの顕著な健康への影響は呼吸器系である。

両方の化学物質は吸引門脈毒性を示す。
ベーパー、ミストの吸引
MDI:
常温でMDIは他の有機化合物と比べ蒸気圧は相対的に低い。

MDIの蒸気圧は、ほとんどの適用中で検知できないほど大気中の濃度は非常に低いとされている。

研究ではMDIの大気濃度は暖房(華氏100度以上)、またはスプレー(アエロゾル化)をともなうプロセスのみに関係していることを示している。
 

TDI:
TDIの蒸気圧はMDIより高く、一般的な室温(70°F )で大気中のべーパー濃度はMDIより高い。また、室温(70°F)では、空気中の濃度は、20ppbのOSHA許容暴露限界(PEL)を超える。

したがって、大気中のTDI濃度が分からないところでは常に、例えば部分的排気換気、適切な個人用保護具(例えば呼吸の保護)の使用などの技術的防護、あるいは作業所の手法(例えば固有な取り扱いおよび貯蔵法)に従うなどの保護対策を取る。
 

加熱あるいは散布されたジイソシアネート:
加熱されたジイソシアネートの曝露は、高濃度になるだけでなく、凝縮し浮遊微小粒子になる可能性もあり、非常に危険である。それは目、皮膚および呼吸器官を害する恐れがある。同様に、スプレーミストも健康上非常に有害である。

 

臭気限界(しきい値):
報告されている化学物質の臭気しきい値は、しきい値試験が歴史的にも一貫したアプローチにかけていることもあって、幅広い範囲で表現される。報告されている臭気しきい値が異なる理由は、化学物質の純度、独自の報告様式、どのように臭いが入ってくるかの外的要因の影響や観測者のタイプ(年齢、性別、人種)によるものである。
MDI と TDI に関する臭気しきい値に関する2つの研究を紹介する.
・MDI:報告されたMDIのための信頼できる臭気しきい値はない。
しかしながら、報告された0.4ppm(400ppb)の値は、MDIが臭いによって検知され、それは過度な曝露が起きていることを示している。 ((Woolrich, 1982)

・TDI:1つの研究(Henschler et al.、1962)において、TDI のにおいの認識は0.05ppm(50ppb)TDI でボランティアの90%が認めた。従って、もし TDI が臭いにより検出されるならば、十中八九過度な曝露が起こっている。
 

呼吸器刺激
呼吸器官系とジイソシアネートの反応は高濃度において刺激と炎症を引き起こす。

刺激物質は、ハツカネズミとネズミの呼吸数の減少を引き起こす。
MDI の RD50(呼吸速度の50%減少)はハツカネズミで32mg/m3(Weyel and Schaffer, 1985)。
また、TDI の RD50は、ハツカネズミ中の1.4mg/m3(0.2ppm)(Sangha and Alarie, 1979)。
呼吸器感作
呼吸器感作はアレルゲンの吸入による気道過敏性症状である。感作性には2つのフェーズが含まれる。
最初の段階はアレルゲンの曝露による個体に特殊な免疫記憶の誘発。二番目のフェーズは、誘出、すなわち、細胞媒介あるいはアレルゲンの曝露による感作固体でのアレルギー抗体媒体の生産。作業所にはジイソシアネートを含め呼吸感作を引き起こす複数の化学物質がある。呼吸器感作の1つは職業喘息である。
MDI および TDI 関連の職業喘息は、作業所の過剰過度な曝露により引き起こされる場合がある。
ジイソシアネートは呼吸器官の気管支反応性症状、喘鳴、息切れ、および以前に過敏症になったものは胸部圧迫感を引き起こすことが実証されている。これらの症状は曝露後、直ぐにあるいは6から8時間後に引き起こす可能性がある。即時および遅延型対応の両方に関する報告がある。
補完研究ではジイソシアナート関連の喘息が初期に診断された場合、それ以上の曝露を回避すると完全に回復することを実証したとしている。(Tarlo、1997; Pisati、2007)
しかしながら、ジイソシアナート曝露が継続する場合は慢性喘息、肺機能の減少は進行する。その結果さまざまな重症度の慢性肺機能障害が起きる。したがって、繰り返される曝露からの早急に逃れるための医療モニタリングはジイソシアネート関連喘息からの回復を助けることができる。死亡は以前に暴露ジイソシアネートの曝露で感作された人の中でおきる。(Carino, 1997; Fabbri, 1988, NIOSH, 1996).