・2.研 究の対象 と方法
対象 は,北 里研究所病院臨床環境 セ ンターのア レルギー科化学物質過敏症外来を受診 し,MCSと 診断された 16名 (男性 8名,女 性 8名 )を 患者群, コン トロール群は,研 究① のコン トロール群対象者のうち12名 (男性 2名 ,女 性 10名)と した。
両群ともに機材 の装着 に先立 ち M.I.N.I.を施行 し, 1週 間連続で機材一式の装着を行 った。 ラピュータに関 しては,患 者群 は午前午後 1回 アラーム鳴動時 と症状出現時に回答, コン トロール群 は 1日 4~ 5回 の回答を指示 した。
3.研 究の結果 と考察
精神疾患の合併 については,身 体表現性障害の項 目が含 まれてお らず評価出来ていないが,患 者群の 5名 にパニ ック障害 0社会不安障害 ・大 うつ病 0強 迫性障害などの「過去」の診断がついた。
「現在」の診断では,9名 にパニ ック発作の基準を満たす症状が認 め られたが, これ らは微量ガスサ ンプ リングの結果か ら化学物質の関与 による発作の可能性が判明 し,パ ニ ック障害の診断はつかないもの と考え られた。
微量ガスサ ンプ リングの結果では,患 者群 の 1 3名 に P a s s i v e S a m p l i n g法よ り もActive Sampling法で高 い濃度を示す物質が認 め られ,こ れ らの うち 12名ではカルボ ニ ル 菊罠とVOC(volatile organic com―pounds;揮 発性有機化合物)類 双方 に反応している可能性が示 された。
患者群 における症状 0認 知機能の変化は,症 状がない状況でアラームが鳴 った時 と症状が出た時の各指標の得点差 について t検 定を行 ったところ,10名 の患者で身体症状が,8名 の患者で抑 うつ症状が有意 に変化 していた。
また,化 学物質 の関与 が認 め られていた 12名の患者 の うち 10名 で身体症状 と抑 うつ気分の得点に高い相関を認めた。
心拍変動 につ いて,患 者 16名 とノイズの少 なか った健 常者 6名 を比較 した ところ,覚 醒時の交感神経系の指標 LF/HFが患者 群 で有意 に低 か った。
また,ActiveSampling法 で化学物質 の関与が示 された患者 13名 と健常者 を比較 した ところ,さらに有意 に患者群の覚醒時 LF/HFの 低下が認め られた。
単位時間あた りの体動をその前後の体動の値 との自己相関を計算す るこ とによ って 活 動 の 持続性 を見 る De―trended FluctuatiOns Analysis15)による1澪析では,患 者群 に活動が持続 していない,つ ま りす ぐ休 んで しま う傾 向が認 め られた。