・3)発 症後の状態における心身相関
CMI健 康調査表
6)で,身 体的 自覚症状のうち「心臓脈管系 ・疾病頻度 ・消化器系(女性のみ)。総点」が患者群で有意 に高 く,精神的 自覚症状では 「不適応J(p値 =0.089)で低 い傾向がみ られた ものの,神 経症 レベルは女性患者群 においてのみ高か った。
感情 プロフィール検査 (POMS)''で は,患 者群は 「活力」が有意 に低 く「混舌LJが有意 に高いほか,「疲労Jが高い傾向が認め られた。
LHQで は 「現在感 じているス トレス度Jが患者群で高かったが,ス トレス反応としての身体 ・行動 0心理いずれの症状 も有意差はなかった。
先行研究では,よ り心理症状が多いとす る報告や,よ り身体症状が多いという報告 8)など様 々であるが,本 研究ではPOMSの 結果 もMCS発 症後の身体的症状 によ り引き起 こされた もの と考え られ,主 に身体症状が中心だった と考えてよい。
精神疾患の診断については,精 神疾患簡易構造化面接(M.!N.|.)9),および精神疾患構造化面接 (SCID)。'mか ら抜粋 した身体表現性障害項 目を施行 した。 その結果,何らかの精神疾患 の診 断率 が 89%と 患者群で明 らか に多 く,特 に身体表現性 障害 が63%と 明 らかに多か った。
不安障害 (48%)と気分障害 (40%)は 統計学的には女性のみ有意 に多か った。
これ までの報告 は MCSの 42~ 100%に 精神疾患 の合併 を認 めたとしてお り②,そ の内訳 はほとん どが身体表現性障害,不 安障害,気 分障害の 3つ である。
中で も,身 体表現性障害の診断についてはさまざまな異論 がある。
MCSが 既知 の一般身体疾患 ではない とい う前提 では,MCSに よるさまざまな身体症状が身体表現性障害 と して診 断 されて しまい,MCSが 既知 の一般身体疾患 だ とすれば,ほとん どの患者 に身体表現性障害の診断がつかな くなる。
この点に関 して慢性疲労症候群の研究を行 った」ohnsOnら は,身 体表現性障害 という概念 は原因が確定 していない病態に対 しては限 られた有用性 しか持たないと述べてい るDo MCSの 病態 が解 明されていない現時点では,MCSを 既知 の一般身体疾患 としない前提で身体表現性障害 の診断をす る必要があ り,MCSと 身体表現性障害 との関連 は今後に課題を残 している。
最後 に, 自律神経機能 に関 して心拍変動係数 (HRV)を 評価 したが,交 感神経機能および副交感神経機能のどちらも両群間で有意な差 は認め られなか った。
これは,患 者群の測定条件が,化 学物質をほぼ完全 に除去できるというク リー ンルーム内で行 ったために有意差が認め られなか った可能性があ り, 日常生活 における自律神経機能を測定す る必要を次の研究課題 として残 した。
4.研 究② :サブグループ別の検討
男性の因果関係 (―)群の人数が少な く統計学的な解析ができないため,女 性のみを対象 とし,女 性因果関係 (―)群 (11名 )0女性因果関係 (+)群 (7名 )・女性 コン トロール群 (29名)の 3群 に分 けて分散分析による解析を行 った。
その結果,発 症 に先立つ心理社会的ス トレスにおいて,有 意差 は認め られなか ったものの,因 果関係 (―)群 において,よ りス トレス耐性が低い可能性が示唆された。
発症および経過 に関わる個人差要因における全 ての調査項 目に有意差 は認 め られなか った。
発症後の状態 における心身相関に関 しては,因 果関係 (―)群はよ り多 くの身体症状および精神症状を自覚 し,精 神疾患の合併 も身体表現性障害 ・不安障害 ・気分障害 ともに多 く有意差が認め られたのに対し,因 果関係 (+)群 は身体症状のみで,精神疾患の合併では身体表現性障害 0気 分障害 のみ有意差 が認 め られた。
以上 よ りMCS患 者 には,身 体精神症状 および精神疾患 の合併 が多 い因果 関係 が不明確 な群と,身 体症状 が主 で因果関係 が明確 な群の,大 き く2つ のサブグループが存在す ることが示唆された。