地方自治体に対する情報公開請求
農水省のアンケート調査は、都道府県、登録検査機関、米集荷業者を対象に行われたものでした。地方自治体には、情報公開条例があります。
そのため、農水省が出さないのであれば、地方自治体から出してもらおうと、青森県、岩手県、岐阜県、福井県、三重県、兵庫県、香川県、山口県、長崎県の9つの地方自治体に対し、各自治体が農水省のアンケートへの回答した内容について情報公開請求をしました。
山口県を除く、8つの地方自治体からアンケート調査の回答票が開示あるいは情報提供されました。参考として、着色粒の規格の緩和を望むと回答した青森県と香川県の回答票を3、4頁に掲載します(全2頁のアンケート票のうち、両県とも未記載であった末尾欄「ご意見・ご要望について」は省略しました)。
アンケート票は、問1~6の設問(選択肢と自由記載欄)および末尾の「ご意見・ご要望について」の記載欄で構成されています。
着色粒の検査規格について尋ねる問5について、青森県は「色彩選別機により除去されて販売されているため、農薬の散布回数低減の観点からも緩和すべき」、香川県は「流通段階では問題となっていない一方で、生産段階では、防除コストが負担となっている」ので緩和するべきと答えています。
なぜ、農水省は、このアンケートの回答票を開示できないのか市民の感覚では理解できません。農水省が主張するように、回答者の信用が問題となるのであれば、回答者の欄を伏せて開示すればよいはずです。
回答自体から、どこの自治体によるものかが分かるような性質のアンケートではありません。
また、農水省が主張する二つ目の理由についても、このアンケートの結果や集計結果(もし農水省が主張するように集計結果が存在するのであればですが)を現時点で公表することが、どのような意味で特定の者に不当な利益や不利益をおよぼすおそれがあるのか分かりません。
反農薬東京グループが都道府県に対して行ったアンケート調査では、着色粒の規格緩和を求める都道府県が過半数を超えたということでした。
農水省アンケートの結果と市民団体の求める政策と方向性が同じであることが分かると特定の者に不当な利益や不利益が生じるのかと勘繰りたくなります。
山口県に対する審査請求(不服申立て)
今回、アンケート調査への回答について開示請求をした9つの自治体のうち、一つだけ、開示をしないという決定をした自治体がありました。
山口県です。
山口県は開示をしない理由として「条例第11条(5)および(7)該当」としか記載しておらず、本件の非公開事由をどのように考えているのかよく分かりませんでした。
このように公開をしない理由をきちんと説明せずに条例の条文だけを記載することは、最高裁で違法と判断されています(平成4年12月10日判決)。
いまだに、このような違法な対応をする自治体があるのは、大変残念なことです。
山口県の非開示処分決定についても、審査請求(不服申立て)を行いました。
山口県は、①アンケートの調査結果が農林水産省から公表されていないため、「国の最終的な意思決定が得られていない場合であり」公開することにより、同種の事業者や将来の同種の事業に係る意思形成に著しい支障が生じる、②調査結果は、目的以外で使用することはないとされており、非公開を条件に提供された情報であることから、公開すると県と国の協力関係又は信頼関係が著しく損なわれる恐れがあると弁明をしています。
山口県の弁明は、いずれも、国の立場を慮るものです。
繰り返しとなりますが、今回地方自治体に行った情報公開請求に対し、山口県以外の8つの県は、このような理由は述べていません。
農水省が調査結果を公表していないことと、山口県が調査にどのように回答したかを開示することは、関係ありません。
山口県には、国の思いを忖度するのではなく、県民や市民のために情報公開制度を運用してもらいたいものです。
最後に
行政文書の開示請求をすると、担当者の方から請求者に電話がかかってきて、質問や確認をされることがよくあります。
そういったやり取りの中から、その役所の体質や市民への対応の姿勢が垣間見えます。
国の役所といっても省庁ごとに情報開示に対する考え方は異なるようです。
財務省による森友学園の土地取引に関する大量の行政文書の改ざんは言語道断ですが、農水省にもぜひもっと透明性を高めてもらいたいものです。
地方自治体も対応がそれぞれ異なり、親切に対応してくれたところもあれば、なんとか開示を避けたいという担当者の思いが伝わってくるところもありました。
同じ文書を異なる地方自治体に請求したことで、違いが鮮明に表れました。