・条例の制定に向けての取り組み
これらのガイドラインや通知は、その内容には評価される点が多いのですが、残念ながら法的拘束力がないガイドラインや通知にとどまっていることから、その遵守が徹底されていないという大きな問題があります。
その一例が、昨年9月14日に埼玉県加須市の小学校で起きました。
授業中に有機リン系農薬のディプレックス乳剤を学校内の植栽に散布したた め、4年生(10歳) の 児 童6名が、のどの痛み、咳、手のしびれなどの症状を訴えて病院に搬送されたのです。
これは氷山の一角で、またどこでこのような遵守事項違反事件が起きても、決して不思議ではないというのが実情です。
そこで、私たちは、ガイドラインや通知よりも効力があるとともに、より周知徹底が図られやすい「条例」を制定することを、各自治体に提言していくことにしました。
そして、オリンピックのホストシティとして、国に先駆けて「子どもを受動喫煙から守る条例」を制定した東京都に対して、タバコだけでなく、子どもの農薬受動ばく露の防止・削減にも取り組むトップランナーとして、本条例を制定するように、多くの NGO 等が力を合わせて働きかけることを提案しています。
東京都でこのような条例が制定されれば、近隣自治体をはじめ、全国の自治体にも波及し、各地で子どもの農薬ばく露防止条例の制定が相次ぎ、やがては国も対策の抜本的強化を余儀なくされるに違いありません。
条例案の概要
前述のキックオフミーティングで国民会議が提案した条例案の骨子は下記のとおりです。
但し、この案は、あくまでも「たたき台」にすぎません。
今後、多くの皆さんからご意見をいただいてより良いものに練り上げるとともに、一日も早く条例が制定されますよう、働きかけをしてまいりたいと思っております。
皆様のご支援・ご協力をお願い申し上げます。
◆条例案の骨子(概要)
(1) 目的 略
(2) 基本理念
①生活環境中での殺生物剤の使用は必要最小限としなければならないこと
②物理的防除や樹種の変更等の殺生物剤の使用以外の方法を優先すること
③やむを得ず殺生物剤を使用する場合には、事前に通知するなどしてできる限り殺生物剤のばく露を避けるようにすること
(3) 遵守事項等(抜粋)
①学校、保育所・幼稚園、病院、公園等の公共施設内の植物、街路樹及び住宅
地に近接する森林等の病害虫防除・除草にあたっての遵守事項
・施設管理者による基本方針の策定、定期的散布の禁止
・物理的防除の優先、散布以外の方法の活用
・やむを得ず殺生物剤を散布する場合、最小限の散布、人の健康への影響が小さい殺生物剤の選択
・「現地混用」の禁止、風向き、天候、散布時間帯、ノズルの向き等への注意
・周辺住民への事前周知
・化学物質に敏感な住民への配慮
・通学路がある場合の特別配慮(散布時間帯、学校・保護者等への周知)
・立看板の設置、立入制限範囲の設定等、関係者以外の立入制限措置の実施
・散布記録の作成、公表
②住宅地周辺の農地における病害虫防除・除草にあたっての遵守事項
・総合的病害虫防除(IPM)の実践
・①と同様の措置の実施
③公共交通機関および特定建築物における殺生物剤使用にあたっての遵守事項
・事業者・管理者による基本方針の策定、公表
・効果が証明できない殺生物剤の使用禁止
・物理的防除方法を組み合わせ、必要以上の殺生物剤を使用しないこと
・使用場所の事前・事後の周知と使用記録の保存
④家庭における殺生物剤使用の削減の努力義務 略
(4) 啓発・教育
・都民に対する殺生物剤の有害性や代替手段、必要最低限の利用にとどめるための知識等の普及・啓発
(5) 推進体制の整備
・都民、区市町村および関係機関等と連携、協力して、必要な施策を推進するための体制の整備
(6) 実効性確保の措置
・遵守事項違反事業者等に対し、遵守勧告を行い、なお違反が続く場合は事業者名等の公表の制裁実施