3.土壌中運命試験
(1)好気的土壌中運命試験
砂土、砂壌土、シルト質壌土(いずれもドイツ)及び砂壌土(米国)に、[met-14C]チアクロプリドを約 0.37 mg ai/kg 乾土となるように混和処理し、20±1℃の暗所で 100 日間、砂壌土(米国)では 365 日間インキュベートして、好気的土壌中運命試験が実施された。
抽出性放射能量は処理直後の 96.7%TAR~98.4%TAR から 100 日後には34.3%TAR~70.3%TAR に減少した。
土壌抽出液中のチアクロプリドは急速に分解して、100 日後には 0.6%TAR~2.0%TAR に減少し、二酸化炭素が 6.5%TAR~33.6%TAR に達した。
主要分解物は M2 及び M30 で、それぞれ最大で73.8%TAR 及び 19.7%TAR 認められた。
ほかに微量の分解物 M29、M31 及びM32 が同定された。
未抽出残留物中の放射能は、試験終了時には 21.8%TAR~30.9%TAR で認められた。
チアクロプリドの好気的土壌における推定半減期は、砂土、砂壌土、シルト質壌土及び砂壌土(米国)でそれぞれ 2.4、1.5、0.7 及び 4.7 日であった。
チアクロプリドの好気的土壌中の主要分解経路は、ニトリル基への水の付加による分解物 M2 の生成、又はチアゾール環の解裂に続く S の酸化による分解物M30 の生成を経て、最終的に二酸化炭素及び土壌結合性残留物を生じる経路であると考えられた。(参照 4、13)
(2)好気的湛水土壌中運命試験
火山灰土・壌土(茨城)及び沖積土・埴壌土(高知)に、[met-14C]チアクロプリドを 0.2 又は 30 mg/kg 乾土となるように添加し、28.1±1℃の暗所湛水条件下で 189 日間好気的にインキュベートして、好気的湛水土壌中運命試験が実施された。
チアクロプリドは表層水から土壌に速やかに移行した後速やかに分解され、主要残留成分は分解物 M2 及び M30 で、火山灰土・壌土でそれぞれ最大 59.8%TAR及び 7.9%TAR、沖積土・埴壌土でそれぞれ最大 62.3%TAR 及び 10.1%TAR 認められた。
揮発性物質としては、二酸化炭素が 8.1%TAR~19.5%TAR 認められた。
揮発性有機化合物の生成量は少なく、0.007%TAR~0.009%TAR であった。
チアクロプリドの表層水中の推定半減期は 2.5 時間、水田土壌系全体の推定半減期は、火山灰土・壌土で 7.2 日、沖積土・埴壌土で 2.4 日と算出された。
チアクロプリドの好気的湛水土壌中の分解経路は、分解物 M2 又は M30 を経て M3 となり、最終的に二酸化炭素及び土壌結合性残留物を生じる経路であると考えられた。(参照 4、13)