2:農薬評価書:チアクロプリド | 化学物質過敏症 runのブログ

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7.開発の経緯
チアクロプリドは、バイエルクロップサイエンス株式会社により開発されたネオニコチノイド系の殺虫剤である。

本剤は、昆虫において中枢神経シナプス後膜のニコチン作動性アセチルコリン受容体に結合し、ナトリウムチャネルを開放し続け、神経細胞に連続的な異常興奮を起こすことにより、殺虫作用を発現すると考えられている。
国内においては、2001 年に初回農薬登録され、ポジティブリスト制度導入に伴う暫定基準が設定されている。

今回、農薬取締法に基づく農薬登録申請(適用拡大:こまつな)がなされている。

海外においては欧州、南北アメリカ、アジア、アフリカ等の数多くの国で登録されている。
Ⅱ.安全性に係る試験の概要
各種運命試験[Ⅱ.1~4]は、チアクロプリドのピリジニルメチル基の炭素を 14Cで標識したもの(以下「[met-14C]チアクロプリド」という。)及びチアゾリジン環のエチレン基の炭素を 14C で標識したもの(以下「[thi-14C]チアクロプリド」という。)を用いて実施された。

放射能濃度及び代謝物濃度は特に断りがない場合は比放射能(質量放射能)からチアクロプリドの濃度(mg/kg 又は?g/g)に換算した値として示した。
代謝物/分解物略称及び検査値等略称は別紙 1 及び 2 に示されている。
1.動物体内運命試験
(1)ラット①
Wistar ラット(一群雄 1 又は 5 匹)に[met-14C]チアクロプリドを 1 mg/kg 体重(以下[1.]において「低用量」という。)で単回静脈内投与して 5 分後に試料を採取又は 5 mg/kg 体重で単回経口投与して 1、4、8、24 及び 48 時間後に試料を採取し、オートラジオグラフィーによりラット体内におけるチアクロプリドの分布が検討された。
臓器及び組織中残留放射能濃度は表 1 に示されている。
放射能は投与後速やかに全身に分布した。単回経口投与において、包皮腺、副腎及び外涙腺等の腺組織で残留放射能濃度が高く、全ての臓器で投与 48 時間後までに急速に減衰した。(参照 4、5、7、13)
① 吸収
a.血中濃度推移
血漿中薬物動態学的パラメータは表 2 に示されている。
血漿中放射能濃度は、低用量単回経口投与群及び反復経口投与群では投与 1~1.5 時間後、高用量単回経口投与群では投与 3~4 時間後に最高値に達した。

投与放射能は血漿から末梢のコンパートメントへ速やかに分布したことが示唆された。
b.吸収率
糞及び尿中排出試験[1.(2)④]の投与後 48 時間における尿中排泄率及び胃腸管を除く動物体内の残留放射能の合計から、経口投与によるチアクロプリドの吸収率は少なくとも 60.4%と算出された。
② 分布
各投与群の動物から投与 48 時間後に主要臓器及び組織を採取して、体内分布試験が実施された。
投与 48 時間後の主要臓器及び組織における残留放射能濃度は表 3 に示されている。
残留放射能濃度は胃腸管のほか、肝臓、腎臓、肺等で高かった。
③ 代謝
尿及び糞中排泄試験[1.(2)④]で得られた尿及び糞を試料として、代謝物同定・定量試験が実施された。
[met-14C]チアクロプリド投与における尿及び糞中の主要代謝物は表 4 に示されている。
尿及び糞中に未変化のチアクロプリドは 0.9%TAR~5.9%TAR 認められた。

尿中の主要代謝物は M7、糞中の主要代謝物は M1 で、ほかに代謝物 M3、M6、M8、M9、M10、M11、M12+M13、M14、M15、M16 及び M17 が認められた。
尿及び糞中の代謝物のパターンに、投与方法及び投与量による差、顕著な性差は認められなかった。
ラット体内における[met-14C]チアクロプリドの主要代謝経路は、ピリジニルメチル基の酸化的開裂による代謝物 M3 の生成、さらにグリシン抱合による代謝物M7 が生じる経路及びチアゾリジン環の水酸化体 M1 とそのグルクロン酸抱合体M12+M13 が生じる経路、シアノ基の酸化による N-水酸化アミド体 M11 が生じる経路が考えられた。
④ 排泄
各投与群の動物から投与後 4、8、24 及び 48 時間の尿を、投与後 24 及び 48時間の糞を採取して、尿及び糞中排泄試験が実施された。
投与後 48 時間における尿及び糞中排泄率は表 5 に示されている。
投与後 48 時間における尿中排泄率は 53.0%TAR~68.1%TAR、糞中排泄率は9.12%TAR~39.1%TAR であり、いずれの投与群においても投与放射能は主に尿中に排泄された。
また、別途 Wistar ラット(雄 5 匹)に[met-14C]チアクロプリドを低用量で単回経口投与して、投与後 48 時間の呼気への排泄が検討された。

総回収率98.4%TAR のうち、呼気中への排泄率は 0.05%TAR であった。