2:柔軟剤を目安量通りに使っても「香害」を引き起こす理由 | 化学物質過敏症 runのブログ

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安全基準は業界が決めた自主規制
 香料について政府・業界は「国際的な基準に基づいて安全性を確認済み」としている。

 具体的には、香粧品香料原料安全性研究所(RIFM=リフム)の評価に基づいて国際香粧品香料協会(IFRA=イフラ)が基準を定め、それを満たした物質を販売しているという。

 しかし、IFRAもRIFMも世界の香料企業が設立した組織だ。香料の安全基準は業界が決めた自主規制にすぎない。

 アメリカの環境NGO「地球のための女性の声Women’s Voice for the Earth」によれば、この基準には問題が多い。

たとえば、RIFMがどんな試験をし、IFRAの委員会がどんな審議をして基準を定めたかなどは公表されていない。

 そこでこのNGOは、RIFMが公表した約3000の香料物質をチェックした。

その際にモノサシとして使ったのは「GHS」分類である。

 GHSは化学物質の有害性などの程度をランクづけし、文字と9種類のシンボルマークで表示する国際制度だ(注2)。

 その結果、1175物質は低い急性毒性がある「警告」のランク、190物質はそれより急性毒性が強い「危険」のランクだった。

急性毒性が特に強く「ドクロ」のマークをつける必要がある物質が44、呼吸器感作性・発がん性・生殖毒性などが強いことを示すマークをつける物質が97もあった(同NGOのサイトによる)。

注2:GHSは「化学品の分類および表示に関する世界調和システム」の英語の頭文字。

国連が加盟国に2008年までに制度化するよう勧告し、日本は09年に導入した。

日本では化学品を売買するときつける「安全性データシート」に記載されるほか、一部の消費者製品に表示されている。
 
 国内では、在野の研究者・渡部和男氏が香料の安全性に関する膨大な数の論文を読み、「香料の健康影響」にまとめ、サイトに掲載している。

 それによると、香料の成分には、

▽アレルゲン(アレルギーの原因物質)になるもの
▽ぜんそくを誘発・悪化させるもの
▽ホルモンかく乱作用(環境ホルモン作用)を持つもの
▽発がん性を持つもの

 などがある。

 また「合成ムスク類」に分類される香料成分は、分解しにくい性質のものが多く、人の血液や母乳から検出されている。

妊娠中に香水をしばしば用いた母親の母乳からは高い濃度のガラクソライド(合成ムスクの一種)が、また香料入り洗濯洗剤を使っていた母親はトナライド(合成ムスクの一種)の濃度が高かったという研究が発表されている。
さらに神野透人・名城大学薬学部教授らの研究によれば、市販の高残香性衣料用柔軟剤20製品のうち、18製品の香料が気道刺激性(ぜんそくを誘発する性質)を持っていた。

毒性を持つ香料も
「移り香」にも注意が必要
 このような毒性を持つ香料は、高残香性柔軟剤の場合、マイクロカプセルというミクロン単位(1マイクロメートルは1000分の1ミリメートル)の超微小粒子に封じこまれている。

 こうすれば洗濯の際、衣類の繊維にしっかり付着し、簡単には取れない。

衣類を身に着け、体を動かしたり、手でこすったりするたびにカプセルが弾け、香りが放出される。カプセルが周りの人の衣類などに移動することもある。

 多くの人が感じる「移り香」だ。

 このような商品では、前の洗濯時のカプセルがまだ残っているうちに次の洗濯でカプセルが追加され、衣類には香りを含んだカプセルが蓄積されていく。

 これが、強い香りが長期間にわたって持続するカラクリであり、「香りが12週間も続く」アロマジュエル(洗剤や柔軟剤といっしょに使う香りづけ専用剤)も売り出されている。

「フレアフレグランス フローラル&スウィート」の成分に話を戻すと、2番目に量が多い「エステル型ジアルキルアンモニウム塩」は、刺激性・殺菌作用・細胞のタンパク質を変性させる作用を持つ。

 この物質は「陽イオン系」の「界面活性剤」の1つだ。

 界面活性剤は水と油をなじませる性質をもち、衣類の洗濯や食器の洗浄に欠かせない物質で、四つのタイプがあるが、陽イオン系はそのうち最も毒性が強い(注4)。

 この物質はGHS分類では「水生生物に非常に強い毒性を持つ」に分類されており、「環境への放出を避けること」とされている。

 3番目の「AE」は、政府が「人の健康を損ない、動植物の生育に支障を及ぼす物質」に指定しているものだ。
政府は「PRTR法」に基づき、国内で使用されている約7万種類の化学物質から健康と環境に有害な462物質を選び、「第一種指定化学物質」に指定している。その一つが柔軟剤に含まれているわけだ(注5)。

注4 界面活性剤で安全なのは「陰イオン系」の石けん。
注5 PRTR法(特定化学物質排出把握管理促進法=化管法)は、環境汚染物質がどこからどれくらい環境中に排出されるかを把握することによって、事業者の自主的な管理を促進するため制定された。家庭からの排出量も推計で公表される。

すべての成分の開示必要
安全性確認は政府・自治体の役割
 このように見てくると、柔軟剤は目安量通り使ったとしても、人の健康にも環境にも悪影響を与える商品であることがわかる。

 いま政府・業界に求められているのは「使い過ぎをやめよう」と呼びかけることではないだろう。

 業界は香りつき商品のすべての成分を明らかにすること。

政府や自治体は(業界の主張を伝えるのでなく)成分の安全性を自ら確かめて公表することだ(アメリカのNGOや国内の一研究者がやったことができないはずがない)。

 これらのことを通して、消費者の商品選びに正しい判断材料を提供すること。それが政府・自治体・業界が果たすべき責務のはずだ。

(ジャーナリスト 岡田幹治)