・室内空気中の化学物質濃度の実態調査
室内濃度指針を見直すために、現在、室内空気中の化学物質濃度の実態調査の検討が行われている。
直接、調査担当したナフタレンとベンゼンについてご紹介する。
・ナフタレン
ナフタレンは、洋服等の防虫剤として家庭でよく使用される物質である。
室内空気のナフタレンの調査を2012年度の夏季と冬季に居間と寝室で行った。
WHO のガイドラインは1立方メートルあたり10㎍であるが、夏季の寝室では108の調査で10㎍以上が7件あり、夏季にはもっとも高いものでは300㎍を超えた。
ナフタレンの年間平均ばく露濃度は1立方メートルあたりで10.5㎍であった。
夏季と冬季の平均はそれぞれ16.2㎍および4.8㎍であった。室温が影響していることは明らかである。
ベンゼン
ベンゼンはヒトおよび動物実験で共に発ガン性があることが確認されており、国際がん研究機関(IARC)ではグループ1に分類されている。
大気濃度は車の排気ガスが規制された結果、環境基準の1立方メートルあたり300㎍以下となっている(環境省平成23年度有害大気汚染物質モニタリング調査結果報告)。
ところが、居間、寝室および屋外でベンゼンの濃度を調査したところ、室内濃度は変動が激しく、300㎍を超えることもあった。
喫煙や、朝晩御仏壇に線香やローソクを備えるとき等の燃焼が原因であることが分かった。
・居間、寝室内で使用される消臭・芳香剤、蚊取り製品の状況
独立行政法人製品評価技術基盤機構・化学物質管理センター「室内暴露にかかわる生活・行動パターン情報*1」によれば、アロマオイル・お香・線香を使用する人は5~6%程度おり、蚊取り製品については、居間では37%、寝室では43.7%の人が使用しているという結果であった。
TRP イオンチャネル理論とはなにか
シックハウス症候群や化学物質過敏症の解明に寄与するものに「TRP(TransientReceptor Potential)イオンチャネル理論」がある。
室内環境中の化学物質に起因する疾病には、シックハウス症候群と化学物質過敏症がある。メカニズムはまた十分に解明されていないが、化学物質と反応をつなぐインターフェイスに TRP イオンチャンネルが関与していることが示唆されている。
これは、温度、機械的刺激、化学物質を検知する侵害受容器であり、感覚神経細胞の他に、気道、鼻腔・皮膚上皮細胞にも存在する。
角膜にもあるといわれる。
その結果、神経が刺激され、侵害反射として咳、呼吸抑制・粘液分泌・気管支収縮・気道感作が生ずる。
ワサビを食べるとツンとする。
これは TRP イオンチャンネルによるものである。
TRP イオンチャンネルには、いろいろな化合物によって活性化される多種類のチャネルが知られている。
たとえばワサビやシナモン、ミント類の場合に活性化するのは TRPA1イオンチャネルといわれる。
トウガラシの場合は TRPV1である。ペパーミントは TRPM8の活性も強い。
こうした TRP イオンチャネル活性化物質のスクリーニングの方法を開発した*2。
活性化した細胞に化学物質を加えると、カルシウムイオンが流入し、緑色に変色することを利用したものである。
柔軟剤とTRP イオンチャネル
国民生活センターによると柔軟仕上げ剤のにおいに関する相談件数が増加している。
相談の内容は体調不良として頭痛、吐き気など呼吸器障害では咳、喉や鼻の痛みである。
柔軟剤に含まれる揮発性成分を調べたところ、TRP イオンチャンネルが活性化することが分かった(図表1参照)。
柔軟剤以外にも、室内環境中には TRPチャンネルを活性化させる化学物質がある。
実験結果によれば、殺虫剤やプールの消毒剤や溶剤、香料等は問題が多い。
runより:今国はナフタレン(ナフタリン)のシックハウス症候群研究をしてますね。
主犯格だけど裏ボスはイソシアネートだろうと個人的に思います。