3:松枯れ対策で散布される殺虫剤の危険性 ―フェニトロチオン、アセタミプリド、チアクロプリド | 化学物質過敏症 runのブログ

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・急性毒性の高い殺虫剤アセタミプリド、チアクロプリドは、ネオニコチノイド系7種のうち、イミダクロプリドと共に劇物指定されている高毒性の殺虫剤である。

ネオニコチノイド7種の経口投与による致死毒性は、ラットではアセタミプリドが 最も強 い 毒 性 を 示し(LD50〈半数致死量〉:182mg/kg)*3、マウスではチアクロプリドが最も強い毒性を示す(LD50:28mg/kg)*4。
ADI(一日摂取許容量)は共に慢性毒性試験の結果より算出され、アセタミプリドで.071mg/kg、チアクロプリドでは0.012mg/kg *5と、ネオニコチノイド7種の中でも低く、長期低用量曝露においても共に毒性が高い。

 人間ではアセタミプリドによる亜急性中毒、チアクロプリドによる中毒死の報告もある。

群馬県では、アセタミプリドの散布もしくは残留した果物やお茶の摂取により、心機能の異常、記憶障害などの症状を持つ患者が多数出て、患者尿中にはアセタミプリドの代謝物が有意に検出された*6。
 

・アセタミプリドの発達神経毒性 我々は、発達期のラット培養神経細胞にアセタミプリドを投与すると、1μM 以上でニコチン類似の興奮作用を起こすことを2012年に論文発表した*6。

2013年、欧州食品安全機関はこの論文を精査し、アセタミプリドには発達神経毒性を持つ可能性があると警告した*7。

2016年、環境研の発表した論文では、母マウスの妊娠 / 授乳中にアセタミプリドを1,10mg/kg 投与し、生まれた仔マウスの行動を観察したところ、低 用量、高用量とも雄マウスで不安行動、性行動、攻撃行動などの異常が確認され、人間を含む哺乳類にアセタミプリドが発達神経毒性をもつ可能性が示された*6。

・アセタミプリド、チアクロプリドの体内動態アセタミプリド、チアクロプリドをマウスの腹腔に投与すると、数分内に脳、肝臓、血中に高い濃度で検出され、血液脳関門も簡単に通り抜けた*8。250分経過を見ると、アセタミプリドは脳、肝臓、血中に残留・蓄積するが、チアクロプリドはほとんど検出されなくなる。

このマウスの尿を2日間調べると、アセタミプリド、チアクロプリドは共に投与量の約20%しか検出されなかった。

アセタミプリドは体内に残留すると考えられるが、チアクロプリドは代謝物として残留したのか、排出したのか分かっていない。

 長野県上田市で、松枯れ対策用にエコワン3フロアブルが散布された前後に、子どもの尿中のチアクロプリドを調べた際、検出率が低いと報告されたが*9、このマウスの結果から推測すると、実際には曝露しても検出が難しかった可能性があるので、慎重な検討が必要だ。

 

・チアクロプリド代謝物の高毒性ネオニコチノイドは、取り込まれた動・植物体内で代謝を受ける。代謝物の中で、デシアノ・チアクロプリドやデシアノ・チアクロプリド・オレフィン体は、原体よりも哺乳類への毒性が高くなり、マウスのLD50 は共に1.1mg/kg で原体の約25倍、毒物ニコチンの約7倍も毒性が高い*4。

この高毒性のチアクロプリド代謝物は、マウスの腹腔投与では脳、肝臓*8、散布された農地でも土中に検出されている*5。

:チアクロプリドの環境ホルモン
作用
EU の農薬データベースでは、チアクロプリドに環境ホルモン作用が懸念されると記載されている。

カナダの研究チームは、ヒトの胎盤培養細胞を用いて、チアクロプリドがごく低濃度でも、胎盤機能に重要なエストロゲンの産生を撹乱することを報告しており*10、胎児や発達期の子どもへの影響が懸念される。
 以上のように、松枯れ対策で散布されているフェニトロチオン、アセタミプリド、チアクロプリドは、原体、代謝物ともに人間に対し急性毒性のみならず、低用量でも悪影響を及ぼす可能性のある殺虫剤である。
ことに、次世代を担う子どもに悪影響を及ぼす可能性が高い殺虫剤の散布は中止して、より安全な手段で松枯れ防止に取り組むことが必要と考える。