・毒性を持つ香料も
「移り香」にも注意が必要
このような毒性を持つ香料は、高残香性柔軟剤の場合、マイクロカプセルというミクロン単位(1マイクロメートルは1000分の1ミリメートル)の超微小粒子に封じこまれている。
こうすれば洗濯の際、衣類の繊維にしっかり付着し、簡単には取れない。
衣類を身に着け、体を動かしたり、手でこすったりするたびにカプセルが弾け、香りが放出される。カプセルが周りの人の衣類などに移動することもある。
多くの人が感じる「移り香」だ。
このような商品では、前の洗濯時のカプセルがまだ残っているうちに次の洗濯でカプセルが追加され、衣類には香りを含んだカプセルが蓄積されていく。
これが、強い香りが長期間にわたって持続するカラクリであり、「香りが12週間も続く」アロマジュエル(洗剤や柔軟剤といっしょに使う香りづけ専用剤)も売り出されている。
「フレアフレグランス フローラル&スウィート」の成分に話を戻すと、2番目に量が多い「エステル型ジアルキルアンモニウム塩」は、刺激性・殺菌作用・細胞のタンパク質を変性させる作用を持つ。
この物質は「陽イオン系」の「界面活性剤」の1つだ。
界面活性剤は水と油をなじませる性質をもち、衣類の洗濯や食器の洗浄に欠かせない物質で、四つのタイプがあるが、陽イオン系はそのうち最も毒性が強い(注4)。
この物質はGHS分類では「水生生物に非常に強い毒性を持つ」に分類されており、「環境への放出を避けること」とされている。
3番目の「AE」は、政府が「人の健康を損ない、動植物の生育に支障を及ぼす物質」に指定しているものだ。
政府は「PRTR法」に基づき、国内で使用されている約7万種類の化学物質から健康と環境に有害な462物質を選び、「第一種指定化学物質」に指定している。
その一つが柔軟剤に含まれているわけだ(注5)。
注4 界面活性剤で安全なのは「陰イオン系」の石けん。
注5 PRTR法(特定化学物質排出把握管理促進法=化管法)は、環境汚染物質がどこからどれくらい環境中に排出されるかを把握することによって、事業者の自主的な管理を促進するため制定された。家庭からの排出量も推計で公表される。
すべての成分の開示必要
安全性確認は政府・自治体の役割
このように見てくると、柔軟剤は目安量通り使ったとしても、人の健康にも環境にも悪影響を与える商品であることがわかる。
いま政府・業界に求められているのは「使い過ぎをやめよう」と呼びかけることではないだろう。
業界は香りつき商品のすべての成分を明らかにすること。
政府や自治体は(業界の主張を伝えるのでなく)成分の安全性を自ら確かめて公表することだ(アメリカのNGOや国内の一研究者がやったことができないはずがない)。
これらのことを通して、消費者の商品選びに正しい判断材料を提供すること。
それが政府・自治体・業界が果たすべき責務のはずだ。
(ジャーナリスト 岡田幹治)