9: 生物の殺傷をめざした化学物質 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・農薬の被ばく経路
家庭内被ばく
 
1980年に米国環境保護庁(EPA)は普通の人の家庭用農薬に対する被曝レベルを推定する研究を行いました。

家の内外から集めた空気サンプル中から23種類の農薬や農薬の分解産物が検出されました。最も高頻度に検出された農薬は広く使われている家庭用農薬クロルピリフォスやダイアジノン・プロポキスル・殺菌剤の有効成分オルトフェニルフェノール・現在は禁止されている殺虫剤クロルデンでした。室内空気は戸外より農薬濃度が高いことが分かりました。

小さな子どもは約90%の時間を住居内で過ごします。

農薬吸入被曝の95%は住宅内で起こると推定されています。
 
米公衆衛生雑誌に掲載された研究では、殺虫剤クロルピリホス(商品名ダーズバン)による室内駆除後に、空気中や家具や建物表面に残留している殺虫剤を調べました。

散布後、3~7時間後、殺虫剤濃度は、親が呼吸している高さより、床に近い幼児が呼吸している低い所で高いことが分かりました。

この他に、散布の24時間後、クロルピリホスがカーペットに残留しているのが発見されています。

散布後24時間に主に皮膚から幼児が吸収する殺虫剤の全量は環境保護庁が成人の許容量と考えているより10~15倍高いと、研究者は推定しています。
 
米国ダラス市の子どもの有機燐系とカーバメート系農薬中毒37件を調べた研究では、子ども全員が家庭で被曝しており、約70%の事故は不適切な貯蔵をされていた農薬を飲んだために起こったことが分かりました。

しかし、15%では、家庭で農薬を使用した後、36時間後に症状が現れたことが分かりました。

研究者らは、子どもは汚染されたカーペットや内壁から農薬を皮膚を通して吸収したと結論を出しました。
 
住宅の周囲で使った農薬はほこりの中に残留し、庭や近くの農場で使った農薬は最後には土壌中に入り、靴やペットに着いて家の中に入ってきます。

室内では農薬は戸外より長く残留します。戸外では太陽と雨に曝されることにより、農薬の分解が進みます。

一般的に、農薬は土壌より家庭内のほこり中に高レベルに濃縮されます。
 
芝生に散布した除草剤が室内へ運ばれることを調べた研究があります。

散布した芝生を通ると芝生に残留していた除草剤が室内に運ばれます。靴に着いて家に入った泥から室内表面とほこりに除草剤は移ります。

2,4-Dを芝生に散布すると、1年後までほこりの中に残留するだろうと推定されています。
 
 
農業地帯での居住
 
日本の農業地帯
 
有機燐系農薬は速やかに代謝され、蓄積性はないあるいは少ないとされているが、散布作業後、有機燐系農薬は尿中から速やかに排出されるが、代謝物は尿中に1週間以上排泄され続けることが知られている。
 
富山県衛生研究所の中崎らのグループ(*)は、富山県の農村及びその近くに住む女性4例(有機農法農家主婦、同一世帯女性、教員、公務員)で、尿中の有機燐系農薬代謝物を長期間調べた。
 
これらの女性では、農薬散布作業をしていないが、4人の尿のほとんどのサンプルで農薬代謝物が検出され、農薬使用シーズンである夏から秋に濃度が上昇する傾向が見られた。

尿中濃度は農薬散布に従事している人と比較して低かった。

農薬使用がされていないと思われる時期にも低レベルの農薬代謝物が検出されていた。
 
以上から、「農村地域では直接農薬散布に携わらなくても周辺の農作業による影響として農薬曝露を受けると考えられ」、「日常生活の中でも有機リン化合物に接する機会があると思われ、それらが長期間体内に止まっている可能性も考えられた」と結論を述べている。
 
* 中崎美峰子ほか、非散布作業者における有機リン系農薬の尿中代謝物追跡調査、日農医誌, 29(2000)142-145.
 
農業地帯でなくとも、住宅地で多量の農薬散布が行われている場合、農業地帯と同じあるいはさらに高度の被ばくを受ける可能性がある。