10.発癌性
イヌでの 1 年間慢性毒性試験やラットでの 2 年間慢性毒性/発がん性試験、マウスでの 2 年間発がん性試験で発癌性は認められていない(食品安全委員会2007)。
しかし、イミダクロプリドに変異原性があるという報告が積み重なっていることから、イミダクロプリドに発癌のプログレッション作用がないので発癌性を示さない可能性がある。
現実世界では多くのプログレッション作用を持つ物質があるため、イミダクロプリドとプログレッション作用をもつ他の物質とに同時被ばくをした場合の発癌の可能性に警戒し続ける必要がある。
イミダクロプリドに発癌性はないとされている
11.被ばく経路
イミダクロプリド被ばくは農薬としての取扱中や、使用される場所近くで生活すること、食品に残留したものを接種することによって起こると考えられる。
これ以外に、ペットからの汚染が考えられる。
Craig et al. (2005)はイヌに使用したアドヴァンテージ(イミダクロプリド製剤)にヒトがどの程度被ばくするかを調べた。
アドバンテージの局所使用後、イヌを扱う時に使用した手袋やイヌ血液を 24 時間と 72 時間、その後 5 週間に渡り毎週採取した。
最も高レベルの血中イミダクロプリドは 24 時間の標本で見られ、1 週間後には検出できなかった。
手袋のイミダクロプリドは各測定期毎に 1/3 になり、4 週目には非常に低レベルになり、5週目には検出されなくなった。まとめると、アドバンテージを局所投与した後に、イミダクロプリドはイヌ血液中に 72 時間検出され、イヌの皮膚を扱うのに使った手袋からはヒトに移行しうるイミダクロプリドが 4 週まで検出できたことを示している。これらのことは、イミダクロプリドに反復して慢性被ばくをすることが、獣医師や関連従事者、イヌの管理人や飼い主に健康へのリスクを与える可能性があることを示している。
被ばくはイミダクロプリドの取り扱いや食品中残留、ペット寄生虫治療による間接的影響により起こる
12.製剤の毒性
台湾の Wu et al. (2001)はイミダクロプリド製剤を飲んだ急性中毒例を報告している。
患者は傾眠や見当識障害、めまい、胃食道のびらん、出血性胃炎、痰をともなう咳、発熱、白血球増加、高血糖を示した。
動物実験で多量のイミダクロプリド投与は振戦や瞳孔反射障害などの中枢神経系賦活を示すので、この患者の傾眠やめまいなどの症状を説明することができない。
この患者の弱い中枢神経抑制や消化器刺激、高血糖の原因は,製剤、特に N-メチルピロリドンによるものとWu et al. (2001)は考えた。
Shadnia and Moghaddam (2008)はイミダクロプリド製剤を飲んで死亡した例を報告した。
臨床的に激しい嘔吐や高血圧、頻脈、対光反射が鈍い散瞳、意識喪失が見られた。
中毒の経過で徐脈や徐呼吸、心肺停止が現れ、死亡に至った。
動物実験で、多量のイミダクロプリドは、振戦や低体温などのニコチンに似た中枢神経系賦活を起こすので、この中毒では製剤のイミダクロプリド以外の成分が中枢神経系抑制や消化器刺激など売文の臨床症状であったと思われた(Shadnia and Moghaddm 2008)。
イミイダクロプリド製剤中毒は製剤を作る時に添加される薬剤によっても生じる