9:ネオニコチノイド:イミダクロプリド | 化学物質過敏症 runのブログ

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9.変異原性
食品安全委員会 (2007)によると、イミダクロプリドはヒトリンパ球を用いた染色体異常試験で 500 μg/mL 以上で染色体異常を誘発する。

またチャイニーズハムスター卵巣由来の細胞を用いた姉妹染色分体交換試験において、染色体異常誘発作用が認められた。
しかし、in vivo での染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験及び小核試験の結果は全て陰性であったことから、生体において問題となる遺伝毒性はないものと考えられた。
しかし、多くの研究がイミダクロプリドの変異原性を証明している。
Shah et al. (1997)はアジノホスメチルやメトリブジン、リニュロン、ジコート、イミダクロプリドの遺伝毒性を調べた。

これらの農薬の代謝物をウシ胸腺の DNA と反応させ、農薬と DNA の付加物を調べ得た。これらの全農薬は付加物を形成し、遺伝毒性があることが分かった。
イミダクロプリドは、マウス骨髄細胞を用いた小核試験で遺伝毒性を示さないが、ミミズにおけるコメットアッセイ*は DNA 障害を起こすことが示している (Zang et al. 2000)。
*コメットアッセイ:コメットアッセイは DNA 障害を調べる方法。

単細胞ゲル電気泳動法で電気泳動された細胞の画像が、尾を引く彗星に見えることからつけられた名称。個々の細胞のダメージを高精度で、少量のサンプルから検出できる。
Fen et al. (2004)はイミダクロプリドのカエルに対する急性毒性や小核試験、コメットアッセイを実施した。

イミダクロプリドのカエルのオタマジャクシに対する 48 時間 LC50は 165-219 mg/l であった。小核試験やコメットアッセイで陽性であった。

これらの試験結果はイミダクロプリドがカエルの赤血球の DNA に悪影響を与える可能性を示している。
彼らはまたイミダクロプリドの遺伝毒性をヒトの末梢血リンパ球で検査した。

イミダクロプリドは低濃度 (0.05 mg/L)で小核や姉妹染色分体交換の頻度を増加させないが、濃度が増加 (0.1 mg/L)すると小核や姉妹染色文体交換の頻度が増加する。

しかし、コメットアッセイでは全濃度で DNA 障害の有意な増加を発見した。
Lin et al. (2005)はソラマメ根端を使いカドミウム土壌汚染による遺伝毒性およびそれに対するイミダクロプリドの影響をコメットアッセイを用いて調べた。

カドミウムは DNA障害を示し、イミダクロプリドを加えるとさらに DNA 障害が増加すると、筆者らは報告した。
Karabay and Oguz (2005)は、ラットで骨髄の染色体異常および小核試験並びにエームズ試験を用いて、イミダクロプリドやメタミドホスに単独に被ばくさせた場合および両農薬を組み合わせて被ばくさせた場合の遺伝毒性を調べた。

どちらの農薬も染色体異常や小核試験、エームズ試験で変異原性を示し、イミダクロプリドとメタミドホスの相乗作用も示した。
Demsia et al. (2007)はイミダクロプリドの遺伝毒性をヒトのリンパ球の小や姉妹染色分体交換の誘導およびラット骨髄多染性赤血球の小核の誘導を用いて調べた。

イミダクロプ リドはリンパ球で小核や姉妹染色分体交換を誘導しなかったが、ラット骨髄の多染性赤血球の小核試験で増加が認められた。
市販されているイミダクロプリド製剤は、ジメチルスルホキシド*やメチルピロリドン*、プロピレンカーボネート*などを含む。

これらがイミダクロプリドの毒性などを変化させうる。

Costa et al. (2009)はイミダクロプリドの変異原性を、製剤や代謝活性化、濃度との関連を、コメットアッセイや小核試験を用いて調べた。

被ばくをしていないヒトの末梢血リンパ球を S9 ミックスの添加と無添加条件下でイミダクロプリドや同モル濃度の製品などに曝した。
イミダクロプリドはコメットアッセイや小核試験のスコアやを高濃度で増加させた。

これらの DNA 障害は製剤でやや強かった。S9 ミックス添加でやや増加したが有意でなかった。これらの結果は低濃度のイミダクロプリドはヒトのリンパ球に遺伝毒性はないが、製剤中の添加物や安全対策が不十分な職業被ばくは DNA 断片化や染色体異常のリスクを高めると、Costa et al. (2009)は指摘している。
*ジメチルスルホキシド:示性式は(CH 3 2 ) SO。水と任意の割合で溶け合い、多くの有機物や無機物を溶解させる溶媒。無色・無臭であるが、長期保存したものは硫黄化合物臭がある。

膀胱炎などの治療に使われる。皮膚や眼を弱く刺激する。
*メチルピロリドン:溶媒。様々な溶媒と混じり合う。

軽度の皮膚刺激と中程度の眼刺激が報告されている。
*プロピレンカーボネート:炭酸プロピレン。溶媒として用いられる。
製造業者はイミダクロプリドに遺伝毒性はないとしているが、多くの研究が遺伝毒性があると報告している