・3.動物体内での動き
薬物動態
薬物動態学
生体に投与した化学物質は、吸収されて血中に入り、体内各部に分布し、代謝され、排泄され
る。
これらは投与物質が影響を及ぼす時間や他の物質との相互作用などにも影響を及ぼす。
薬物動態学は化学物質の投与方法と量、血中濃度などの関係を定量的に扱う。
実験的薬物動態試験は,動物に投与された化学物質の吸収や分布、代謝、排泄を調べる。
さらに投与による各種臓器や組織への分布、その経時変化、蓄積性を検討し、胎盤や胎児、乳汁中への移行性についても調べるラットに14 C 標識イミダクロプリドを 1 回経口投与し薬物動態を調べた(食品安全委員会 2007)。
放射能のほぼ全てが吸収され、血中の最高濃度到達時間は雄で 1.46-2.43 時間、雌で 1.11-2.05 時間であった。
血漿中の放射能消失は二相性*であった。第一相の半減期は雄で 2.59-3.26 時間、雌で 3.23~3.59 時間であった。
第二相の半減期 は雄で25.8-118 時間、雌で 28.6-72.6 時間であった。
*二相性:血中の化学物質が消失する場合、1つのコンパートメントモデルを考えると、半減期
に従った比較的単純な減少を示す。
2つのコンパートメントを仮定した時には、単純に減少するのではなく、早期の減少に相当する第一相の半減期と後の減少に相当する第二相の半減期を考える。
Brunet et al. (2004)はイミダクロプリド慢性被ばくのリスクを、人間の結腸由来の細胞である Caco-2 細胞 系* でイミダクロプリドの吸収を調べた。
その結果、イミダクロプリドは能動輸送によって強い吸収が行われることが分かった。
* Caco-2 細胞:ヒト結腸癌由来の細胞株。薬物の消化管膜透過性のスクリーニングなどに用いられる。
排泄
14 C 標識イミダクロプリドをラットに投与(1 または 20 mg/kg)すると、放射能の 90%が 24 時間以内に主に尿や糞中に排泄される(食品安全委員会 2007)。
体内分布
投与したイミダクロプリドの臓器・組織内への分布は、胃腸管以外で少ないが、それ以外では肝臓、腎臓、肺、皮膚及び血漿で比較的多かった。
また、脂肪組織や脳中での分布は少なかった(食品安全委員会 2007)。
これはイミダクロプリドが親水性のためと思われる。
イミダクロプリドは速やかに吸収され、血液からの消失も比較的速やかで、ほとんどが尿や糞中に 24 時間で排泄される
イミダクロプリドは能動輸送によって吸収される